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【絵を描いてて立体感がでない!】絵画における立体感の出し方~そもそも立体感とは何か?

こんにちは。管理人の河内です。

今回は絵を見たり描いたりしていると必ず聞いたことのあるワード『立体感』についてお話してみたいと思います。

 

初心者の方や独学で絵を練習されている方には自分の絵に「立体感がない」、描いていても「立体感が出ない」などと感じて悩んでおられる方もいらっしゃると思います。

管理人の運営する絵画教室でも、生徒の皆さんから時折聞く悩みではあります。

 

ではなぜ自分の絵に立体感が出ないのでしょうか?そもそも“立体感”とは何なのでしょうか?

普段何気なく使っているだけに実はあまり詳しく考えることのないこのワードを、今回は管理人なりにじっくりひも解いて解説してみたいと思います。

 

※注)生理学的に立体を認識するという時、人間は左右の目で見える像のわずかなずれ(これを両眼視差というそうですが)を、脳内で処理してそれを立体として感じるというのがメカニズムだそうですが、ここではそうした話ではなくあくまでも「絵画においての立体感」について話をしていきます。

 

目次

絵画における“立体感”とは?

ではそもそも“立体感”とは何でしょうか?

その前提として確認ですが“絵画”とは平面(=2次元)に描かれたものですよね。

そこに現実の空間(=3次元)を“感じさせる”というのが絵を描く一つの目標でもあります。

そして立体感とは「描かれたものが立体的(3次元)に感じること」であり「平面に奥行きを感じる」ということなわけです。

 

ではそれを感じるのは誰でしょうか?

そう、もちろんその絵を描いた人も含めた私たち、その絵を見ている人ですね。

 

では私たちはどういうときに「立体的だな」と感じるのでしょうか?

実はそれを知らなければ立体感を表現することは出来ないのです。

 

立体感を出すにはどうすればいい?

では絵画において“立体感を感じさせるにはどうすればいいか?”

 

それを決めるキーワードがズバリ『陰影』です。

 

私たち(の脳)は、光があって初めてモノを見ること(認識すること)が出来ます。

しかしただ光が当たるだけでは立体感は感じることが出来ません

そこに陰影による“濃淡”があって初めて立体感(ボリューム)を感じることが出来るのです。

 

その濃淡を、木炭や鉛筆、絵具などを使って色の階調(トーンtone)を作り出す。

これが立体感を感じさせるための一番のポイントとなるのです。

 

こちらの写真をご覧ください。

左側は全光と言って全体に均等に光は当たり陰影がありません。

右側は斜光、つまり斜めから光が当たり、ものには陰影とその階調があります。

 

このように、光が当たっていても当たり方によって陰影があるかどうかがそのまま立体を感じさせるかどうかに繋がっていくのです。

 

さらに言うと“陰影”とは明度差のことです。

これをきちんと意識、絵の中で表現していくこと、これが立体感を出すためには不可欠なのです。

 

しかし実際には、ものには色があり、目に強く意識されるのは明暗より色の方です。

 

ですから皆さんリンゴを描くとしたら、リンゴのあの赤さをどう作ろうか、何色と何色を混ぜてあのオレンジを出そうか、などは一生懸命に考えるのですが明るい暗いは意外とおろそかになり、その結果それなりにいい色が出たのになんだかのっぺりしている絵になってしまうのです。

 

 

立体感を出すために気を付けるべきこと

では実際に立体感を表現するにはどうすればよいのか見ていきたいと思います。

 

立体感を出すための注意点①

 

上の写真のように陰影をつけるためには光の方向を一方向に設定しなければなりません。

 

どちらが明るくてどちらが暗くなるかをきちんと設定しなければ陰影がバラついてクリスマスの電飾のようにあちらこちらで明るかったり暗かったり光が乱反射したようで大きなまとまりとしての立体感が出てこないのです。

 

これがまず初めに注意しなければいけないことなのですが、皆さんはいつもどのような状況で絵を描いていますでしょうか?

絵を描かれる方のほとんどはアトリエや教室、自宅など屋内だと思います。

その場合、蛍光灯やLEDなどの光源は複数あるのが通常です。

とすると、モチーフに当たる光は反射も含めて色んな所から飛んできます。

 

フェルメールのように電灯を使わず窓際で描かれる方が光も自然光でよいのですが、なかなかそうはいきません。

フェルメールの代表作《牛乳を注ぐ女》 フェルメールはモデルをいつも同じ場所(アトリエの窓際)に立たせて描きました。

 

そこで対策としてモチーフの一方に壁(衝立)を立て光を遮断します。

可能であれば暗い布などを描けて反射も抑えます。

ついたてがなければなるべくモチーフを壁に寄せてセットし、黒い布や紙を壁に貼ってみるのも良いでしょう。

こうすることで一方向からの光源を確保できますので是非試してみてください。

 

立体感を出すための注意点②

 

人物画などを練習する際、独学で練習されている場合などは写真を使ってそれを見ながら描かれる方も多いと思います。

しかし写真の場合、特に芸能人やモデルさんなどを撮った写真の場合は注意が必要です。

理由は①と同じですが光の方向が一定ではないということ、さらに人物の肌をきれいに見せるためレフ板という反射板をモデルに当ててわざと影を飛ばしていることが少なくないからです。

 

この場合、どれほどきれいに撮れた写真であっても凹凸が見えず立体感が表現できないのです。

 

時々ネットやテレビなどでまるで「写真のように描かれた超リアルな絵」が紹介されているのを見たことがある方も多いと思います。

 

しかしそれらはあくまで「写真のよう」なだけで、ここでいう絵画的立体感とは意味合いが違います。

 

その違いをここで詳しく説明する余裕はありませんが、このように写真を使って絵を描く練習をする場合はなるべく注意点①で書いたように、光が一方向から差し、逆に影がある程度しっかりついたものを選ぶようにしてください。

そうすることで陰影がつけやすくなります。

立体感を出すための注意点③

最後に注意が必要なのは特に金属のように光を乱反射するものや、蛍光色のように色の彩度が高いものを描くときです。

 

この時はなかなか難しいのですが、あえて影の部分を意識的に暗く落とす作業が必要です。

金属としての質感や鮮やかな色彩が特徴のモチーフであっても、それをすべてで表現する必要はありません。

光の当たっている明部でその特徴をしっかりと描き、ハーフトーンから暗部ついては実際に見えているより数段階彩度を落として(水彩画など色を使った表現の場合は混色して色を濁らせるなど)表現します。

こうすることでしっかりと明暗の差、明部から暗部へのトーンの移り変わりを表現するようにしてみてください。

 


今回はここまで。

次回は具体的な練習法を含め解説していきたいと思います。⇒【絵画における立体感の出し方】そもそも立体感とは何か?~その②

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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