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【展覧会報告】ピエール・ボナール展レポート

こんにちは。
管理人の河内です。
今回は現在東京、六本木にある国立新美術館で開催中の『ピエール・ボナール展』を見て来ましたのでその報告をしたいと思います。

僕も随分ひさしぶりにボナールが見れるなと思っていましたが、なんと14年ぶりだそうです。
日本ではそれほど一般的に知られてはいない画家ですが、ボナール自身は『日本かぶれ』と言われるほど日本の美術に強い影響を受けた画家でした。
本場のフランスでは2 015年にオルセー美術館で開かれた『ボナール展』に51万人もの観客が訪れ、その前年に行われた『ゴッホ展』に次ぐ歴代2位の入場者数を記録するほど人気の高い画家ですのでこの機会に是非知っていただければと思います。

目次

ボナール展①【展覧会概要】

会場:国立新美術館 企画展示室1E
会期:2018年9月26日(水)~12月17日(月) 火曜日休館
10:00~18:00 金・土曜日は20:00まで。入場は閉館の30分前まで。
主催:国立新美術館、オルセー美術館、日本経済新聞社
オルセー美術館所蔵の作品を中心に国内外のコレクションと合わせて油彩72点、素描17点、版画・挿絵本17点、写真30点の合計約130点の作品が展示されています。

公式ウェブサイト: http://bonnard2018.exhn.jp/

ボナール展② 見どころ

今展覧会の見どころとしては、パリのオルセー美術館が誇るボナールのコレクションから数多くの作品が出展され、そのうち約30点が日本初公開ということです。
展示は時代順にそれぞれ章立てがされていて、1~7章までに部屋が分かれています。
初期のころから年代順に展示されているので、ボナール芸術の流れと全貌が分かるようになっています。
作品の形式も日本美術の影響で作られた掛け軸的な縦長のものや屏風状のもの、ポスター、ボナール自身が撮った写真などいろいろな作品が見られます。

 

ボナール展③ ボナールってどんな人?

ピエール・ボナールは19世紀末から20世紀前半に活躍したフランスの画家です。
『ナビ派』と呼ばれるグループの中心的画家であり、リトグラフによるポスターのデザインで世に認められ画家としてキャリアをスタートさせました。
絵画だけでなく挿絵やポスターなど幅広く活躍し、大胆なデフォルメや表を突く構図はロートレック様浮世絵からの引用が見て取れます。

ボナールが最初に世に認められたポスター

繊細な線や様式化したフォルムでモチーフを装飾的に表現し、非常に洗練された独創性豊かな表現が特徴です。

ボナールは日常の何気ない情景を好んで描きましたが、その作品は独特の色彩による光の表現と構図によって不思議な世界、まさに「時間が静止」したような感覚を見る者に感じさせます。
人物を多く描いていますがそれらはみなどことなく虚ろで生き生きとした人物というのではなく家具や背景と一体となった風景の一部として描かれています。

ボナール自身、部屋に入った瞬間に見える景色を描きたいと言っているように、そこにあるものや人物が個々に認識される以前の全体の雰囲気を重視した表現で、ぼんやりとした印象です。

ボナールの描いたモチーフは室内の情景や人物が多く、主にアトリエで制作をしましたが、一方でモネ以来の外交の表現に関心を持ち風景画も多く描いています。特に晩年南仏に移ってからはその明るい陽光から美しい作品を多く描きました。

※『ナビ派』とは、ゴーギャンから教えを受けた画家ポール・セリュジエとそれに共鳴した仲間のボナールやヴィヤール、モーリス・ドニと言った若いたちが結成した絵画運動の一つです。大胆で感覚的な色彩と、単純化した平面的なフォルムや色面が特徴で、日本美術の浮世絵からも大きな影響を受けました。
ナビはヘブライ語で“預言者”を意味する言葉です。

同じナビ派の画家・ヴィヤールの作品

 

ボナール展④ ~私的感想

管理人が観に行ったのは平日の昼間でしたが、思いのほかお客さんが多かったですが、並んだり待ったりするほどではありませんでした。
個人的にも大好きなボナールを久しぶりに堪能できる展覧会でした。

上にも描きましたように日本文化に大きな影響を受けた点からも、柔らかい光の表現からも日本人には受け入れやすい画家ではないでしょうか。

画家である管理人の目から見ると、やはりボナールの抜群のセンスと色彩感覚にはいつみても驚かされます。
特に浮世絵の影響が強かった初期の頃のポスターや版画などは100年以上たった今でも全く古臭さを感じさせません。

そしてボナールをあまりよくご存じない方に特に注目していただきたいのは、その色彩、色のハーモニーです。
このブログでも何人も「光の魔術師」や「色彩の魔術師」などと異名を持つ巨匠をご紹介してきましたが、まぎれもなくボナールもその一人です。(もちろん光、色彩と言っても画家一人一人全く違うこだわりと方向性を持っているのですが)
特にボナールについてはこれぞ色彩のハーモニー!と叫びたくなる作品で、純粋に目を楽しませてくれるのでいつまで見てても飽きません。会場を去るのがとても名残惜しかったです(*ノωノ)

管理人が運営する絵画教室で、生徒さんから「色が濁ってしまって…」とか「きれいな色が出ません」なんて相談を受けることがよくあります。
そんな時よく言うのが「色にキレイも汚いもありません。色は関係性と階調で見え方が変わるだけです」というのですが、まさにボナールの絵がそのことを証明してくれています。
部分で見ると濁った色やかすれた塗りが目につきますが、全体で見ると本当にそれらが響き合い美しい色調となっているのです。でもそれをいざやるとなると…とても難しい話ですが(;^_^A

今展覧会で興味深かったのは、当時コダック社が開発したばかりのフイルムによって写真が手軽に撮影できるようになったことで、ボナールも写真に大いに興味をもち、ボナール自身が撮影した作品なども見られたことです。そしてそれらがボナールの絵画にも少なからず繋がっていたのです。

あとボナールと言えば、奥さんのマルトがバスタブに浸かっている絵が代名詞ですがそれが今回なかったのが残念でした。

こんな作品↓

ボナール展⑤ まとめ

管理人個人的には間違いなく今年の1,2を争う良い展覧会でした。
やわらかな光の世界に浸れるお勧めの展覧会であることは間違いありません。

難しいことは一切抜きに、純粋に目を楽しませてくれるのがボナールです。

しかしよくよく考えてみると、ボナールの生きた時代は2度にわたる世界大戦を跨いだ混乱の時代でもありました。
ピカソが戦争の悲惨と人間の愚かさをぶつけるようにゲルニカを描いたり、ムンクはナチスから頽廃芸術と罵られたり、果ては戦死したり疎開や亡命を余儀なくされた画家たちも数多くいた時代です。

しかしボナールの絵画からはそうした暗い影は一切伝わってきません。
芸術は時代を映す鏡であると同時に、全く関係のない世界というのもあるということを教えてくれます。ボナールの絵画には穏やかな日常、穏やかな色彩と光、静止した時間がそこにはあります。
芸術とは純粋に人を喜ばせ楽しませるという役割もあるのだなとつくづく感じさせてくれました。

秋の行楽もかねて首都圏にお住いの方や東京に御用のある方は是非足を運んでみてはいかがでしょうか?

 

 

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