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破壊と創造!ピカソの画風とその変遷

こんにちは。管理人の河内です。

 

この記事では≪カメレオン≫とあだ名されるほど、目まぐるしくそのスタイルを変え続けた画家・パブロ・ピカソの画風を年代順に詳しく解説していきたいと思います。

 

目次

ピカソの画風① 青の時代

その名の通り青い色調で画面が覆われているところからこの名で呼ばれています。

若きピカソが初めて築いた独自のスタイルです。

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親友カサヘマスを自殺という悲しい出来事に、ピカソ自身も親友を救えなかった無念や深く沈んだ内面を象徴するかのように、色調だけでなくそこに描かれる人々もまた社会の隅に追いやられはみ出した人々が描かれ、自画像ではその目はうつろで凶器を含んでいるよう名さえ見えます。

スペインマニエリスムの巨匠エル・グレコの影響を受けて、人物は細く引き伸ばされている。

圧倒的な写実的デッサン力を持つピカソが、パリで様々な前衛表現を吸収して、写実ではとらえきれない内面の表現に重きを置いた作風です。

ピカソの画風② バラ色の時代

ピカソのモデルだったフェルナンド・オリビエとの交際を通して、ピカソの心に安定と平安が訪れます。

それまでの陰鬱な青色は次第に影を潜め、ピンクやオレンジなど暖かな暖色が画面を覆うようになりました。

またこの時代の作品では人物以外に花や動物などが登場したり、コスチュームの模様などが作品に装飾性を持たせています。


この時期にはサーカスの家族や曲芸師を多く描いており、モデルたちに独特のポーズ、特に手に表情を持たせたポーズが数多くあります。

複数の人物が描かれている作品では、なぜかそれぞれ別の方向を向き、視線が合うことはなく、皆、無表情で今だ陰鬱な印象の顔が多いのが特徴です。

ピカソの画風③ キュビズム

1.分析的キュビズム

25歳のピカソがいかにして伝統を打ち破り、自分が前衛の旗手として抜きんでるか、という野心を持って描かれたのが「アヴィニョンの娘たち」でした。

それまでの伝統的西洋美術の世界では、絵画は一つの決まった位置からものをみて描くというのが常識でした。

多分今でも普通はそう思いますよね。

しかしピカソとブラックはその常識をまさに壊してしまったのです。

モチーフを、色んな視点から見たものをそれぞれ小さく分解し、それをまた一つにつなぎ合わせたところにみそがあります。

まさに破壊と創造ですね。

こうして訳の分かる絵からわからない絵になったのです。

この多視点の手法は後期印象派のセザンヌによってすでに試みられていました。

セザンヌの静物画ー一見普通に見える静物画ですが、よく見てみると物がいろんな角度から見て描かれています。

キューピッドの石膏像はほぼ横から見ていますが、置かれている机はやや上から見下ろしています。

右奥の床は反りあがり奥の梨(?)が転げ落ちそうに見えたり、キューピッドの左に見えるキャンバスや青い布の位置関係がわからなかったり逆転しています。

ピカソは「自分の師はセザンヌだけだ」と語っているようにブラックと二人、セザンヌの模写と見紛うような作品から研究をはじめ、さらに推し進めてできたのがキュビズムです。

それはピカソとブラックの常識への挑戦でした。

ピカソは言っています「なぜ見たものをそのまま描かなければならないのか?そんなことをするくらいならば完全な円を描こうとする方がましだ」

キュビズムの技法は多くの追随者を生みました。

写実の呪縛から解かれたことで、画家たちは形体の自由を手に入れます。

また一方でマチスら野獣派と呼ばれる表現者たちが登場します。

見えたままの色(客観的)ではなく、主観的に感じたままの色を使い、その激しさからこのように呼ばれていますが、彼らはゴッホの影響を受けて色彩を解放したのです。

この二つ、つまり「色彩」と「形体」に加え続く総合的キュビズムになると、絵具という「素材」からも解放された絵画は全くの自由となり抽象画への道が切り開かれたです。

またキュビスムは、日本では「立体派」と訳されることが多いですが、1908年のブラックの展覧会を見た評論家ルイ・ヴォ―クセルやマチスが小さな立方体の集まりのようだと語ったことからキューブ(立方体)イズムと名付けられたので、実際には「立方体派」と訳す方がが正しいです。

またこの多視点による分解と再構成は、一旦新古典主義の時代に影を潜めますが、後年の「ゲルニカ」や「ドラ・マールの肖像」など、もっともピカソの作品を特徴づける重要な表現となります。

2.総合的キュビズム

1911年ごろになると分析的キュビズムを推し進めたことによって形、イメージを細分化しすぎたあまり、作品は極めて抽象化されました。

しかしピカソもブラックも抽象画を目指していたのではなく、あくまでも現実のイメージや形に依拠しようとします。

しかしそれは従来の写実とは違った形で。

ピカソは「見えるものを描くのではなく知っていることを描く」といっているように絵画に知的で新しい要素を取り入れます。

それがコラージュやアッサンブラージュです。

コラージュとは紙など平面的なものを張り付ける技法。アッサンブラージュは砂などを絵具に混ぜたり、厚みのあるものを張り付けたりする技法のこと。

現実のものを直接貼り付けたり、文字を書き込むなどして現実の世界を作品に持ち込もうとしたのです。

(文字はイメージであり現実でもあるような中間的な存在といえます。)

描かれたイメージと現実のものが一体となるこの技法によって、それまでの絵画が「決まった枠の内側にある世界である」という「窓」としての「絵画」を完全に破壊したといえます。

このように総合的キュビズムでは、分析的キュビズムからさらに一歩進んで、新たな平面作品の可能性を示しました。

作品を楕円形にしたり、現実の新聞や壁紙、ロープなどを張り付けたことで分析的キュビズムでは失われた色彩が作品に戻り、装飾的な作品として親しみやすさも生まれました。

ピカソの画風④ 新古典主義の時代

1917年、ピカソはロシア・バレエ団の舞台衣装をデザインするためにローマを訪れました。その際ピカソは古代ローマやルネサンスの古典様式に感銘を受けます。

またそのバレエ団ダンサーのオルガと結婚し、彼女から「私にもわかるように描いて」欲しいといわれたこともありキュビズム的作品を捨てて、古典様式を取り入れるようになります。

その技法は捨てたはずの古典的陰影法によるボリュームを感じさせ、彫刻的で単純化されたフォルムに特徴があり、19世紀の新古典主義の巨匠ドミニック・アングルなどからの影響が見て取れます。

そいえば印書派の巨匠ルノワールもまた、印象派的表現に行き詰まりを感じていた頃にイタリアを旅行し、ルネサンスの巨匠ラファエロなどに感銘を受けて伝統的な線によるデッサンと陰影法を取り入れるなどピカソとの共通点が興味深いですね。

ピカソの画風⑤ シュルレアリスム時代

シュルレアリスムとは、フロイトによって始まった精神分析学をもとに、人間の無意識や夢の世界に注目した新しい芸術運動のことです。

1924年にフランスの詩人アンドレ・ブルトンによって始められました。

シュルとは英語のスーパー=「超」、レアリスムは現実主義ということで超現実主義と訳されます。

この運動に刺激を受けて作品を描いた時期をシュルレアリスムの時代と呼んでいます。

ピカソ自身はシュルレアリストではありませんが、その機関紙に絵を掲載したり、「シュルレアリスト展」に出品するなど親密な交流がありました。

1925年頃になると、妻オルガとの不仲による精神的不安定さが表れているとも言われるように、ピカソの作品に描かれた人物は写実性を失って変形し、まるで怪物のような人物表現となります。

非現実的な形態や不思議な生物のようなものが風景の中に描かれて妙なリアル感が不穏な雰囲気を感じさせいます。

ピカソ作品では珍しく淡い色調で描かれた非現実的な世界。シュルレアリスムの時代はピカソ芸術の中では異質な雰囲気の時期といえます。

【ピカソに関するその他のお勧め記事】

・『20世紀アート最大の巨人』パブロ・ピカソとはどんな画家だったのか?分かりやすく解説します。

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