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【作品解説】ピーテル・ブリューゲルの代表作をご紹介します。

こんにちは。管理人の河内です。

今回は、16世紀北方ネーデルランドの巨匠、ピーテル・ブリューゲルの代表作をご紹介します。

幻想的な作品で知られるヒエロニムス・ボッシュ(ボス)の影響から独自の画風を展開したブリューゲル、「農民画家」とも呼ばれるほど当時の農民や庶民の生活、文化習俗を徹底した細密描写で描きました。

ブリューゲルの代表作① 「イカロスの墜落のある風景」

1556~58年 73.5×112㎝ ブリュッセル王立美術館蔵

ブリューゲル初期の代表作で、古典神話をもとにした唯一現存する作品です。

イタリアから帰国してすぐの頃の作品と思われます。

翼をもつ少年イカロスが、空高く飛びすぎて太陽に焼かれて墜落するという神話がモチーフですが、その扱いは非常に小さく、画面右下に海に落ちて下半身だけが描かれています。前景に描かれえる農夫や羊飼いなど、誰一人イカロスに気づいていないようです。

日常的な農耕の様子と輝く海に出向しようとする帆船などが、ブリューゲル初期の特徴である高い視点から見た広々とした平和で長閑な風景が広がっています。

人の野心のむなしさ、世界に対する人間の無知の戒めが語られています。

 

ブリューゲルの代表作② 「ネーデルランドの諺」

1559年 117×162.5㎝ ベルリン国立美術館蔵

諺や比喩、格言を主題とした絵画はブリューゲルの時代人気がありました。

それらは大きく分けると、人の愚かなふるまいを示すものと、人間の罪深さを表現するものです。

ブリューゲル絵画でもよく知られるこの作品には、当時のネーデルランド地方のことわざや格言が80以上(一説には120以上)も描かれているそうです。人間の持つ本質的なエゴイズムや欺瞞などを表していることが多く、その一つが画面中央下部で赤い衣服の若い女性が、老夫に青いマントをかけている場面です。青いマントは裏切りや欺瞞を表していて、この行為が若い妻が夫に対する肉体的裏切りや金銭目的の結婚であったことなどが表現されているのです。

他にも左下では豚が酒樽の栓を引っこ抜いていてこれは「大食」を意味し、その前で男が壁に頭をぶつけています。これは『無駄骨を折る』という諺。

 

ブリューゲルの代表作③ 「謝肉祭と四旬節の喧嘩」

1559年 118×164.5㎝ ウィーン美術史美術館蔵

主イエス・キリストの死からの復活を記念する祝日(復活祭)の前の40日間、受難者イエスを偲び肉食や祝祭を自粛する修養期間が『四旬節』。それに先立つ肉食などの禁則事項との告別を行う祭事『謝肉祭(=カーニバル)』を主題に人間の愚かさを描いた作品です。ヒエロニムス・ボッスの『快楽の園』の影響が窺え、ところ狭しと群衆の様々な行為や愚行が緻密に描かれています。驚くべきことにここに描かれている様々な奇形乞食の病名が現代医学から正確にわかるそうです。

 

ブリューゲルの代表作④ 「穀物の収穫」

1565年 118×161㎝ プラハ メトロポリタン美術館蔵

一年を通して農民の生活を描いた連作月歴画の一つです。1年を2月ずつ計6枚で構成されており本作ではそのうち穀物の収穫時期である8,9月を描いたものと思われます。ブリューゲルの友人でアントウェルペンの裕福な金融商人ニコラース・ヨンゲリンクの邸宅の装飾画として制作されました。

のどかな田園風景とそこに暮らす農民の姿が生き生きと、物語の一場面のように描かれています。緻密な細部の描写から、当時の服装や道具、食生活までが分かります。

暑い夏の終わり黄金色に輝く小麦の収穫に精を出す農民たち。木陰で休み食事をとる者などありふれたのどかな田園の日常が詩情豊かに描かれています。

鑑賞者の視線は右手前の人々から小麦畑を抜け、遠景へと導かれる構図は、広々とした世界を感じさせます。

 

ブリューゲルの代表作⑤ 「バベルの塔」

1563年 ウィーン 美術史美術館蔵

昨年日本でも公開されたのでおそらくもっとも人気があり有名な作品でしょう。

あまりにも細部にわたって細かに描写されているのでいつまで見ていても飽きることはありませんね。

バベルの塔は旧約聖書創世記に記されている伝説の建造物です。『ノアの箱舟』のノアの子孫二ムロデ王が、自身の力を誇示するために天に届かんばかりの高い塔を作ろうとしました。その様子を見た神は怒り、人間の驕りを罰するため同じ言葉を話していた人間の言葉を通じないようにさせ混乱させたという物語です。

 

また昔からこの塔は自尊心の象徴で、ブリューゲルにとっても人間の虚栄心を意味していました。

足元に広がる風景と都市は想像の残物ではなく、ブリューゲルが実際に入念に周囲の土地を観察した結果に基づいています。構図自体は実際の場所を表しているわけではありませんが、事実に基づく典型的なネーデルランドの景観が広がっているのです。

 

ブリューゲルの代表作⑥ 「雪中の狩人」

1565年 ウィーン 美術史美術館蔵

6点からなる連作月暦画のうちの一つ。おそらく一月を表す荒涼とした冬景色です。中世の時祷書に見られるような美しい世界が広がっていて、遠方には峻厳にそびえたつアルプスが見えます。

雪に覆われたまっ白な景色と樹木や人物、空を舞う鳥たちのほぼ黒に近い暗色が水墨画のようでもあり、冬の冷気と静けさをも感じさせます。

狩りを終えて犬たちを連れて森から町に戻ってきた狩人たちが、街をみてほっとしているところでしょうか。犬や狩人たちは首を垂れて厳しい狩りの旅を物語っている反面、遠くの凍った湖でスケートに興じる人々が対照的に描かれています。

 

ブリューゲルの代表作⑦ 「怠け者の天国」

1567年 52×78㎝  ミュンヘン アルテ・ピナコテーク蔵

ブリューゲルの寓意を主題にした作品です。寓意画とは聖書に出てくる物語や諺などを、日常の情景を通して登場人物や事物を象徴として描き、人間の罪や愚行の戒めが描かれた絵のことです。

そしてここに描かれているのは怠惰と暴飲暴食といった『大食』という罪。

食べたいだけ食べ、働かずに居眠っている男たちは、僧侶、農夫、兵士たちです。

しかしこの絵では『盲人の寓意』のようにその後彼らに下される懲罰については描かれておらず、ただ彼らの滑稽さだけが描かれています。

このほか中央下の「食べかけの卵」は「精神性の不毛の象徴」であり、左上の「お菓子に覆われた屋根」は「豊富で有り余ること」右上の「腹にナイフが突き刺された豚」は「事はすでに決められている」といった諺などがあちこちにちりばめられています。

 

ブリューゲルの代表作⑧ 「サウロの回心」

1567年 108×156㎝  ウィーン美術史美術館蔵

聖書の使徒列伝に出てくる話を描いたブリューゲル晩年の作品です。

サウロがキリスト教徒を迫害しようとダマスクに向かう途中、突然天から光が差し込み失明し落馬してしまいます。サウロはその時「なぜ私を迫害するのか」というイエスの声を聞き、回心してキリスト教徒になりました。

構図は隊列にいる歩兵の視点から描かれており、ここでも主人公であるサウロは大変小さく描かれ(中央右手で落馬している)、強い遠近感をもって峻厳な山と遠くに広がる風景がダイナミックに描かれています。この風景はブリューゲル自身のアルプス越えの旅の記憶から着想を得たものと思われます。

 

ブリューゲルの代表作⑨ 「盲人の寓意」

122×170㎝  1568年 ナポリ カポディモンテ美術館蔵

盲目というテーマはブリューゲルの作品に度々登場します。この絵は聖書マタイによる福音書第15章14節の「もし盲人が盲人の手引きをするなら、二人とも穴に落ち込むであろう」という言葉にもとづいています。ここでは背景の聖堂が「信仰」を象徴し、「盲人」たちその聖堂に背を向けていて真の信仰に目をつぶるものを象徴しており、彼らを待ち受ける不幸を恐ろしいイメージの比喩で表現しています。

 

 

ブリューゲルの代表作⑩ 「農民の結婚式」

1568年ごろ 113.5×162.5cm ウィーン 美術史美術館蔵

これもブリューゲルの有名な作品ですね。古今東西結婚式というのはお目出たいお祭りです。長いテーブルを挟んで楽し気に会話や食事に興じる当時の人々や楽団が演奏する陽気な音楽が聞こえてきそうです。供される食物やお酒も丹念に描かれているところから暴飲暴食を戒める意味も込められているかもしれません。

 

ブリューゲルの代表作⑩ 「農民の踊り」

1568年頃 114×164cm ウィーン美術史美術館蔵

ブリューゲルの作品の中でも農村の情景が最も生き生きと描かれたものかもしれません。

祭りの市の日か、聖人祝日の行事の様子が描かれています。

楽し気に踊る男女、それに早く加わろうと急ぐカップル。飲みすぎた酔っ払いなどどれも微笑ましく感じますが、この楽し気な絵にもブリューゲルは「信仰の軽視」、「情欲」、「怒り」、「大食」といった人間の愚行や罪を戒めをこめて描いています。

 

【ブリューゲルに関するこのほかの記事】

・北方ルネサンスの巨匠ブリューゲルの生涯と作品をご紹介します。

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