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リアルに「怖い絵」!?『ミイラから作られた絵具』があった?!

こんにちは。管理人の河内です。

皆さんは「怖い絵」というベストセラーの美術本をご存じでしょうか?

美術に隠された悲しい歴史やおどろおどろしいいわくなどがまとめられシリーズ化もされているベストセラー書籍なので皆さんも読まれたことがあるかもしれません。

この本では作品にまつわるお話や歴史について“怖い”話がつづられているのですが、今回ここで取り上げるお話は、絵そのものの素材、ずばり“怖い絵の具”についてご紹介したいと思います。

にわかには信じがたい話しですが、実際にあった美術のこぼれ話として是非ご覧ください。

 

目次

リアル怖い絵①「ミイラから作られた絵の具があった!」

タイトルからしておどろおどろしいですね。

皆さんは実際のミイラから油絵の具が作られていたなんて話を聞かれたことがあるでしょうか?

恥ずかしながら管理人もつい最近知りました。

一瞬耳を疑いましたがどうやら事実であり、まさかあの誰もが知っている名画にも“それ”が使われていたというのです!

 

一般的に絵具に使われる顔料(色の素となる材料)は昔から天然の石を砕いたものであったり、植物から抽出したものが多く、現代ではカドミウムやコバルトなど危険な物質を避けるために人工的に作られた安全な顔料などが使用されています。

他には動物の骨を焼成したもの(アイボリーブラック)であったり桃ノ木を炭にしたもの(ピーチブラック)など自然のものに人間が手を加えたものが代表的です。

 

まさか実際の人間のミイラを材料に絵具が作られていたなんてにわかには信じられませんよね?一体どういうことなのか見ていきましょう。

 

リアル怖い絵② ミイラから作られた色「マミーブラウン」とは?

「マミーブラウン」その名の通りマミー(mummy)=ミイラ、ブラウン(brown)

=褐色、「ミイラの褐色」ずばりそのまんまです!

この色は16世紀から17世紀にかけて製造されていた絵具で、実際にエジプトからヨーロッパに持ち込まれた古代エジプトのミイラを原料とした色(絵具)なのです。

「マミーブラウン」の特徴は、その透明感と豊かな褐色にありました。

色名でいうとバーントシェンナとローアンバーの中間のような色味で、オイルで薄く溶いて暗く色を描ける“グレーズ技法”には最適だったようです。

しかしそこは元が何千年も前の人(動物)の体。個体差も大きく成分や品質にばらつきが大きく、そのためひび割れを起こしたり他の絵具と混ぜると変質するなどあまり使いやすい絵具とは言えなかったようです。

 

リアル怖い絵③ なぜミイラか?

ヨーロッパでは中世以降、てんかんから胃薬まで多種多様な病の治療に「ミイラ」(人間だけでなく猫のものも)を原料として使用していたという歴史があります。

 

科学的な裏付けはほとんどないと思いますが、なんでもミイラには“ビチューメン”という天然のアスファルトやタールが含まれていてそれに薬効があると信じられていたそうです。

管理人が思うに、古来、虎や熊など強い動物を食べるとその力が人間にも宿るという話は世界中にありますので、ミイラにもそうした人知を超えたもしくは死を越えたものとして何かしら霊的な力があると考えたとしても不思議はないですよね。

 

そして詳しいことは分かりませんが、その一部がどうやら絵具の原料として使われていたということで、当時の薬局では“薬”としてと“絵具”としての両方で売られていたそうです。

 

それでも18世紀末になると、ミイラにそれほどの薬効がないと分かってきたのか薬としての人気は落ちて来たようです。

 

しかしその代わりといっては何ですが、ナポレオンのエジプト侵攻もあってヨーロッパでは熱狂的な“エジプトブーム”が巻き起こりました。

ヨーロッパにエジプトから盛んにいろんな品々が輸入され、その特産品のひとつとして「ミイラ」もありました。

ミイラを見世物や飾り物として、そして肥料や画材として持ち帰ったのです。

そしてあまりによく売れたということで実際にはエジプトのミイラではなくヨーロッパ人の遺体を乾燥させただけのまがい物まで出回ったといいますから当時の熱狂ぶりがわかりますよね。

 

リアル怖い絵④ あの超有名画家も使っていた?!

ミイラからつくられた色「マミーブラウン」には独特の透明感や魅力がりました。

そこに目をつけたのがラファエル前派という17世紀イギリスの画家たちです。

しかしその本当の原料を知ったラファエル前派の代表的画家バーン・ジョーンズは、なんとその絵の具のチューブを庭に埋めて埋葬の儀式までしたそうです。

”ラファエル前派”の画家エドワード・バーン・ジョーンズの作品

それもそれで律儀な性格というか・・・やっぱり本物にはそうさせる力があるのでしょうか・・

 

 

「マミーブラウン」が使用されている作品 マルタン・ドロリング「台所の情景」

さらに美術愛好家ならだれでも知っているあの巨匠ウジェーヌ・ドラクロワが描いたあの超有名作「民衆を導く自由の女神」の中でもこの「マミーブラウン」が使われていたというのです。

管理人も何度か実際にルーブル美術館でオリジナルを見ましたが、まさかあそこに…この事実を知っていれば思わず手を合したかもしれません…(;^_^A

 

当時の画家たちも実はそうとは知らず使っていたようで、本当の原料が知られるにつれて次第に使うのをやめていったそうです。(そりゃそうですよね(;^_^A

 

 

リアル怖い絵⑤ リアル「怖い絵」まとめ

 

いかがでしたか?まさか本当に本物のミイラが絵具に使われていたとは驚きでしたね。

何千年も前の乾燥した一見すると作り物の様に見えても、私たちと同じように生きていた人間ですからね…(;^ω^)

それを使って描かれた絵はまさにリアル「怖い絵」と言えます。

この話を知った今、ここで取り上げた作品を見る目が変わるかもしれませんね。。

 

現在も名前だけが残っていて「マミーブラウン」という名の絵具はあるそうですが、もちろん別の材料で作られているのでご安心を。

 

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