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【初心者・独学者のための絵画練習法】人物画を描くためのデッサン練習法をご紹介します!(後半)

こんにちは。

管理人の河内です。

今回は人物画上達のための練習法の続きになります。

前半をまだお読みでない方は、そちらを先にご覧ください。

【人物画を描くためのデッサン練習法をご紹介します!前半)】

 

目次

人物画練習法④ 模写クロッキーのすすめ

ラファエロのデッサン

次にご紹介するのは“模写クロッキー”です。

これはかなり管理人お勧めの練習法です。

 

『模写』と言えば、絵を学ぶ上で定番の練習法ではありますが、ここでお勧めしたいのは

過去の巨匠たちが残した名作の下絵である“素描”の模写です。

 

模写がなぜ良い勉強になるかというと、理由はいろいろありますがまずはオリジナルの作品は、技量だけでなく風景なり人物なり描かれたものが画家の目(しかも天才の)を通して取捨選択された結果だということです。

 

私たちが視覚的に得られる情報はあまりにも膨大で、人間はそれらすべてを知覚できないため、私たちが見たものを描くとき、無意識に多くの取捨選択をしています。

 

そして絵が上達すればするほど無駄のない選択と省略、時には誇張などがなされ絵画として、実際のモデルを見て描くより効果的に表現していけるようになるのです。

 

古典の巨匠たちは、一枚の絵を仕上げるために様々に試行錯誤を繰り返してより理想的な人物像を表現しようとしました。

その過程が“素描”(デッサン)であり、これらを模写することで、巨匠たちが目指した人体の理想的なバランスや無駄のない表現が学べるのです。

つまり“美味しいとこ取り”が出来るのが模写なのです。

ルーベンスのデッサン

例えばこういうところは太い線、こういうところは細く弱々しく、影はここではしっかりつけるがこっちはうっすらとだけ、のように画家がどう描いてあるかを模写する過程で教えてもらえるのです。

 

これを通してより効果的な線の引き方、影の付け方を知らず知らずに身に着けることができるようになります。

 

こうした巨匠たちの素描も、昔と違って今はネットで簡単に手に入れることができます。

管理人のお勧め画家はラファエロ、ミケランジェロ、ダ・ヴィンチなどルネサンス期の巨匠の他ルーベンスやアングルなどです。

彼らの名前にデッサンやドローイングなどをつけて画像検索すると、たくさんの資料が出てきますのでご活用ください。

ミケランジェロのデッサン

管理人の運営する教室でもこれらを配って生徒さんに描いてもらっています。

 

”模写クロッキー”のやり方は簡単です。

ここで上げたような、巨匠たちの素描を見ながら鉛筆やコンテ、木炭などで紙にマネをして描いていくだけです。

模写といってもあくまでクロッキーですので、時間をかけてしっかり写すというよりは、ある程度スピード感をもって一気に描いていきましょう。

失敗してもできるだけ消しゴムなどで消さず、何度も線を引き直します。

あまりにも引きすぎてごちゃごちゃしてきたら紙を変えてもう一度同じ絵を描く。

お手本とする素描の中にはスケッチ的にさらっと描かれたものからしっかりと陰影をつけて肉付けされたものまでいろいろありますが、これらの完成度に合わせてご自身で描く時間も10分、20分、30分など分けて描く練習をしてみるのも良いでしょう。

 

ですがポイントは、一枚の作品をきっちり仕上げるのではなく繰り返し練習という意識をもって描くことです。

同じ絵を3回4回と描くことでより人体に対する理解が深まっていきます。

当然最初はしいですが、短時間で何枚も描く、そして手に体の形を覚えさせる、そういった意識で取り組んでみてください。

紙は何でも大丈夫。チラシの裏でも質は問いません。でもツルツルして鉛筆やコンテの色がつかなようなものは避けてください。

あとサイズも実は重要です。

紙のサイズが大きくなればなるほど全体のバランスをとるのが難しくなります。ですのでA4とか小さいものよりも少しでも大きいサイズの紙を使われる方がより効果的な練習になります。

ちなみに管理人が学生時代は木炭氏紙サイズ(65×50㎝)のクロッキー帳をよく使っていました。

 

 

 

 

人物画練習法⑤ 写真を見て描く

 

 

現実問題としてこれが一番手っ取り早い練習法ではありますが、実は管理人的には初心者の方にはあまりお勧めできません。

 

特にアイドルやモデルさんの写真などは、肌をより美しく明るく見せるためにレフ版(反射板)を使ったりして光をわざと飛ばせています。

そのためボリュームを出すために必要な陰影がなくなっているのです。

 

ある程度経験がある中級者以上の方であれば、自分のイメージで陰影を補って描くことは出来ると思いますが初心者の方にはやはり難しいでしょう。

 

どうしても写真を使って描く場合は、光が一方向から定まっていて、しっかりと陰影があるものを使うようにすると良いと思います。

こんな感じ↓

しかし写真はどれだけきれいに映っていても、絵に描くには情報が少なすぎます。

 

イラスト程度ならそれでも良いのですが、微妙な骨格や筋肉の凹凸、重心など大事な部分を想像で描いても、先生について見てもらえる方なら間違いを指摘されたりもできると思いますが、独学の場合ですと誤った理解をしてしまう危険性もあります。

 

人体を勉強するには上記④まででご紹介した手法がやはりお勧めで、描き慣れてきてから写真を使うと良いと思います。

 

 

人物画練習法⑥ 抑えたいポイント

ではここまでご紹介した練習法をやるにあたって共通して押さえておきたいポイントをお伝えしたいと思います。

 

①全体を大きく「かたまり」でとらえる

 

最初は大まかなバランスをとる練習をしましょう。

どんなモチーフであれ初心者の方は、目立つところや細部に気がいってしまい近視眼的にものを見がちです。

 

全体を俯瞰して大きなかたまりとしてモデルをとらえることを心掛けてください。

言い換えれば細かいところは気にせず全体のバランス、流れに注目するということですが、これがなかなか難しい。

 

そのためにはモデルをじっと凝視せず、目を細めてぼんやりと見ることが大切です。これについては【デッサンの基本】の記事に詳しく書いてありますのでそちらも参考にしていただければと思います。

 

 

②全体の流れを見る

 

人物画が難しい理由はいろいろありますが、いわゆる動かない「静物」や「風景」と違って“動く”という点が挙げられます。

そしてその動きは各部位の筋肉や骨格が連動し、流れを作ってバランスを取っています。

これを「ムーヴマン」と言ったりしますが、この流れ、動きをとらえることで、人体の持つしなやかな姿勢が表現でき、できないと人形のように固くぎこちない絵になってしまいます。

 

特に人体で重要なのが重心です。

人間は証明写真を撮るときでもない限り、直立している場面はほとんどなく体の前後左右どこかに偏って体重をかけています。

 

例えば立っている人が、右足に体重をかけていれば、骨盤が右に傾き腰骨の左右の位置がずれます。そうすると今度は上半身でバランスをとるために肩が左右逆に上下します。

 

このように重心がどちらにあるかで全身の動きが変化し、それを見極めないと倒れそうになったりぎこちなくなってしまうのです。

 

③人物の形状を憶える

 

そして次に大事なのが「人物の形を覚える」ということです。

筋肉の形状、そしてそれらが動きに合わせて、また力が入った時どのように変化するか?などを覚えることが大切です。

 

これも初心者の方が良くやりがちなのですが、モデルを正確に描こうとするあまり、右から左に写し取ることだけに集中し、頭でしっかり形を把握していないことがあります。

 

この時、制作者の頭の中では部分ごとに視覚的に認識しているにすぎないのでいつまでたっても人体を覚えることは出来ません。

 

大切なのは筋肉の形や骨格がどういうかたちをしていて、どういうバランスでつながっているかなどを“覚えようとする”ことです。

 

もちろん医者になるわけではありませんので、大胸筋とか名称を知識として詳しく知る必要はありませんが、人体を形作る筋肉や骨格をある程度理解し覚えておくことで人間“らしさ”を表現できます。

 

それぞれの部位ごとに体の線はどういう風に動いているか?どういう風につながっているか?などを常に意識してモデルを見るように心がけましょう。

 

そのための練習のポイントとしては初めは難しいかも知れませんが、ある程度長い線を引くように心がけると良いと思います。

 

できれば関節から関節までぐらいを、線を途切れさせることなく一本で引くようにします。

その過程で筋肉や骨格の隆起やへこみがどのようになっているか覚えていくことが出来ます。

 

このためにも上記のように細かく近視眼的に見るのではなくもう少し広い視野でモチーフを見ることが重要です。

 

管理人が生徒さんによく例え話で言うのが、学生が授業を受けているとき、黒板に書かれた文章をノートに写しますよね。

それを一文字一文字丁寧に「わ」「た」「し」「は」と写していてはきれいな文字が書けたとしてもその文章の意味をつかむことはできません。

 

「わたしは」とある程度の塊で捉えてこそ文章の意味が頭に入るように、デッサンをする時にもある程度の塊で捉えてこそ頭に定着されていきます。

その塊りというのが、始めは関節から関節くらいで覚えていただくのが良いという分けです。

 

 

人物画練習法~まとめ

いかがでしたか?今回は主に初心者、独学者の方にもできる人体デッサン上達のための練習法とそのポイントをいろいろご紹介してきました。

ここでご紹介した練習法は、管理人の教室でも実際の授業で行っている方法ですので自信をもってお勧めできるものばかりです。

 

普段からモデルさんを描いていらっしゃる方にとっても有効な練習法だと思いますので是非参考にしていただければと思います。

 

また個々の練習法の具体的なやり方は別の機会にご紹介していきたいと思います。

 

【人物画練習法に関するその他のおすすめ記事】

【目の描き方】① 人物の目を上手に描くために抑えておきたいポイントを解説!

【目の描き方】②実践編  目を上手に描くために抑えておきたいポイントを解説!

・【口の描き方】① デッサンで口を描く前に抑えておきたいポイントを解説!

・【口の描き方】②実践編”!デッサンの制作過程に沿って解説します!

・【初心者・独学者のための絵画練習法】人物画を描くためのデッサン練習法をご紹介します!(前半)

 

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