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【実践!背景の描き方】油絵の背景ってどう描くの? その②

こんにちは。管理人の河内です。

今回も引き続き絵画の背景に焦点を当てて解説していきたいと思います。

 

前回の記事をご覧になっていない方はこちらをご覧ください。

⇒【実践!背景の描き方】その①

 

前回の記事で背景の表現によくみられるパターンを4つご紹介しましたがその続きです。

 

目次

背景パターン②

「構図を工夫して画面に大きな余白を作らない」

これは後ろに空白をなるべく作らないようにするというやり方です。

言い換えれば主役で画面を埋めてしまうということです。

この場合よく使われる手法として、壁に布をかけたり高さのあるモチーフを立てかけたりと、立体的なモチーフを組むやり方です。

制作例

背景に何を描けば良いのか分からない方はこの方法で試してみてはいかがでしょうか?

 

 

背景パターン③

ルノワール作『ジャンヌ・サマリー』

ルノワール作『ジャンヌ・サマリー』

③好きな色を塗る。

 

これは単純に自分の好きな色を塗る、または描きたい絵の印象に合うような色を塗るというものです。

 

管理人的には初心者の方に一番お勧めな方法で、生徒さんにもまずはこれをやっていただいています。

 

やはりまだあまり油絵に慣れていない段階ですと、モチーフを描くことに全力を費やして背景まで気が回らないというのが普通です。

 

ですので最初は少しでも負担を減らすために、モチーフも増やさずにあえて何も描かずに好きな色を塗るのです。

 

 

“絵の印象に合う色”というのはあくまでも作者のイメージに合うという意味ですね。

例えば赤い薔薇を描いたとして、バラの花にどういうイメージや印象を持つかは人それぞれです。

 

真っ赤な色に色気を感じる人は暗く渋い色を、清廉なイメージを持つ方は明るく薄い色を塗るといった感じです。

背景の色が変わると印象が全く変わってしまう。

 

またお孫さんの写真など可愛い感じの絵に仕上げたいなら、ピンクや水色などの淡いパステル調の色がお勧めですし、ちょっとアンティークなモチーフを描いているなら黒や濃紺などの渋い色調で重厚な感じを出すのもいいかもしれません。

 

しかしここで注意しなければならないのが色には“彩度”という尺度や、前進色と後退色という分け方があるということです。

 

このことについても少し触れておきましょう。

 

色を塗るときの注意点①彩度

 

彩度とは、色の鮮やかさの度合いのことです。

 

絵の具は基本的にチューブから出した時が一番鮮やかできれいです。

そして他の色と混ぜれば混ぜるほど濁っていきます。

 

この性質を踏まえて、例えば背景を“奇麗な”赤で塗ろうとします。

 

チューブから出したそのままが一番きれい(彩度が高い)なのでそれを塗ると…鮮やかすぎて真っ先にその赤色が目に飛び込んでくるのです。

 

奥にあるはずの背景が手前に飛び出しては困ります。

 

それを抑えるために、そのままの色ではなく若干の違う色を混ぜて使うと落ち着いてくれます。

例えば黄土色や茶色といった土系の色、あるいはグレー系の色などです。

これを少しずつ混ぜて赤の彩度を調節することで奥に引っ込んでくれますので是非覚えておいてください。

 

色を塗るときの注意点② 前進色と後退色

 

もう一つの注意点は、色には前進色と後退色というものがあるということです。

 

前進色とは文字通り前に出て来るように見える色、後退色は奥に引いていくように見える色を言います。

大まかにいうと赤やオレンジなどの暖色が前進色、青や緑など寒色、グレーなどが後退色です。

 

特に背景を塗るにあたって考えなければならないのが前進色です。

上でも書きましたように背景はモチーフより奥に見えることが前提ですから、前進色を使う場合、これも彩度を抑えるのと同じように土系の色やグレーまたは白などを混ぜることで出てこないように調整しましょう。

 

 

実際の塗り方

 

最後に、実際の塗り方についてですが初心者の方によくありがちなのが、壁など広い面を塗るときは、刷毛のような大きな筆で一気に塗ろうとするやり方です。

特に初心者の方に多いのが、筆の跡や塗りムラが気になってしまい、きっちりと塗たくなってしまうものですがこれはあまり良いことではありません。

べったりと均一に色を塗ることで背景の“平面性”が強くなりすぎて奥に引っ込まずに手前に出てきて見えてしまうのです。

背景という以上後ろに引いて見えなくてはいけません。

 

ではそのためにはどう塗るか?

セザンヌを例に見て見ましょう。

セザンヌは《近代絵画の父》と言われる画家で、その理由はいろいろありすぎてかなり難しいこともありますので気になった方はこちらの記事をご覧ください。【近代絵画の父】ポールセザンヌの生涯と作品をご紹介します!

 

ここでは背景の塗り方にヒントを探してみたいと思います。

この静物画の背景は、おそらく白っぽい壁があるだけで特に何も描かれていません。

しかしよく見ると、セザンヌ特有のタッチがうっすらと見えてきます。

このタッチにも専門的にはいろいろ意味があるのですが、ここではこれらタッチの効果について見てみます。

 

タッチを少し残しながら、ここが重要なのですが微妙な色合いが混じっています。

白い壁という印象を壊さない程度にオレンジや赤、緑など様々な色が混ぜられているのですがそれらはみな手前のモチーフの中に使われている色なのです。

 

そうすることで、壁とモチーフが互いに引き合い画面全体に統一感が出ているのです。

 

 

 

背景パターン④

自分でアレンジして描く。

 

これは一番初心者や独学者の方にはハードルが高いかもしれません。

ですが慣れてしまえば本当の意味で絵を自由に創造することが出来ます。

 

 

このパターンはさらに3つに大きく分けることが出来ます。

一つ目は『コラージュ』。

つまり他の絵や写真、モチーフなどその場にはない別の具体的なイメージを背景に張り合わせるやり方です。

ピカソ”バラ色の時代”の作品『パイプを持つ少年』

ピカソ”バラ色の時代”の作品『パイプを持つ少年』

 

 

二つ目は図形や色、または“抽象的なイメージ”を構成して描く手法。

マチス作「リュート」

 

三つめはその折衷型となります。

 

 

このパターンで描く場合、三つともに言えることは、いきなりキャンバスに描くのではなく事前にエスキースをとると良いでしょう。

 

エスキースというのは本番前の練習であり構想を練るための絵コンテのようなものです。

 

紙にささっと簡単にスケッチをしてここには何を描こうとか、どんな色を塗ろうとかイメージをしながら形に起こしていく作業です。

 

画面全体のバランスやモチーフとの力関係、前後関係などを考えながら自分なりの世界観をある程度具体化してから本番のキャンバスに描き込むとスムーズに進みます。

 

とは言ってもいざエスキースをそっくりそのまま描いてはもたものの「思ってたのと違う」「やっぱりこうしよう」など途中変更なんてこともよくありますので、本番に入ってからも随時臨機応変に対処してより自分のイメージを練り上げていきましょう。

 

 

まとめ

いかがでしたか?

普段はあまり強く意識されることのない背景。

脇役として軽く見過ごしがちですが、実は作品にとってとても重要な役割をもっていたことがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

絵を描くときはもちろん、展覧会などでプロや巨匠の作品を見る場合でも、背景に注目して見るのも面白いと思います。

 

背景で悩んだ時、是非参考にしていただければと思います。

 

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