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『オランダバロック~魂の画家』レンブラントの代表作を解説します!その①

こんにちは。管理人の河内です。
今回は17世紀のオランダ・バロックの巨匠レンブラントの代表作を詳しく解説してみたいと思います。
レンブラントは『光の魔術師』と言われるように、イタリアバロックの創始者であるカラバッジョの影響を受け、明と暗を効果的に使ったドラマチックな表現が特徴です。またその作風は若い頃は精緻で迫真のリアリティが目を引きますが、中年以降から晩年にかけてその表現は独自の進歩を遂げ深い精神性を帯びた余情深い画風へと変わっていきました。

レンブラントの代表作① 『聖書を読む老女(女預言者アンナ)』

1631年 59.8×47.7㎝ アムステルダム国立美術館蔵
レンブラントにとって『聖書』や『古代史』に関する人物像は、生涯にわたって描き続けた重要な主題でした。
それは礼拝の対象ではなく、また物語の中からも切り離された一つの肖像画として描かれています。

この作品では東方的な衣装を着た老女が、薄暗い空間の中で、一心にヘブライ語らしき文字で書かれた分厚い書物を読んでいます。このことから彼女は「イスラエルの救世主」の到来を人々に告げる預言者アンナ(ハンナ)であると考えられています。
この老女のモデルは19世紀末以来、レンブラントの母親であるとされていますが、彼女がレンブラントの絵画やエッチングに繰り返し描かれているということ以外はそれを証明する証拠はないようです。

 

 

レンブラントの代表作② 『テュルプ博士の解剖学抗議』

1632年 170×216㎝ マウリッツハイス美術館蔵
アムステルダムの著名な医学博士ニコラ―ス・トゥルプに依頼されたレンブラント最初の大作です。

トゥルプは後に4度も市長を務めた町で有数の名士でした。
この絵では死体の左腕の腱の構造を説明しているところです。
中央の三人が身を乗り出して熱心に観察しながら博士の説明に聞き入っています。
オランダにおいて、解剖は当時ようやく認められ始めたころで、まだ回数も少なく、使われる死体も死刑囚の遺体に限定されていました。

この絵の遺体も「小僧」というあだ名で知られた犯罪者で、絞首刑に処された直後に解剖に提供されたものでした。

また腐敗を防ぐために解剖は真冬の厳冬期に限られていました。同じ理由から解剖は腹部から初めて内臓を取り除くのが通例でしたが、レンブラントはあえて凄惨すぎる場面を避け、腕の切開に留めて描きました。

レンブラントはこの作品で従来の集団肖像画の概念を打ち破り、名声を確立した出世作です。

 

 

レンブラントの代表作③ 『フローラに扮したサスキア』

1634年 125×101㎝ エルミタージュ美術館蔵
この作品はレンブラントが結婚した年に描かれたこともあり、モデルが妻のサスキアだとされてきました。しかし厳密にはそれは確証はないようです。
また彼女が花の女神フローラに扮した女性なのか、フローラ自身を描いたものなのかも定かではありません。
レンブラントは肖像画においていわゆるコスプレを好み「見立て」で描くことも多く、反対に神話の神であってもあまり理想化をせず生身のリアリティをもって描くこともあったのでそのどちらかを判別することが難しいのです。

 

レンブラントの代表作④ 『ペルシャザルの酒宴』

1635年 167.6×209.2㎝  ロンドンナ ショナルギャラリー蔵

バビロニアの王ペルシャザルがソロモンの宮殿から略奪した金銀の酒器を使って酒宴をしていると、突然空中に人の手が現れ誰にも分らない文字を記しました。預言者ダニエルは、この言葉は王国の滅亡と王の死の予告であると告げます。

その夜、ペルシャザルは殺され、国土もペルシャ人ダレイオスに奪われてしまいました。
この作品では王やその妻、取り巻きが突然現れた手と文字に恐れおののく場面が描かれています。
強い明暗の対比と芝居がかった人物たちのポーズや表情からバロックの特徴そのものです。
王の身に着ける装身具や輝く食器などのリアルな質感表現は、圧倒的なレンブラントの技量を見せつけるかのように描かれ、この時期レンブラントの描写力が完成していたことが分かります。

 

レンブラントの代表作⑤ 『サスキアといる自画像』

1635年ごろ 161×131㎝ アルテ・マイスター絵画館蔵
今作はおそらくレンブラントがサスキアと結婚して間もなくのころ描かれた作品です。
この頃レンブラントは画家としても私生活でも頂点に差し掛かろうとする幸せに溢れた時期であり、それがレンブラントの表情からありありと伝わってきます。
レンブラントはここで自身を《放蕩息子》として描いています。
《放蕩息子》とは聖書(ルカによる福音書)に登場する「遠いところに行き、そこで放蕩に身を持ち崩して財産を使い果たした」と書かれている男のことで、居酒屋や売春宿の場面設定でよく描かれる主題です。
当時「売春行為」などは倫理規範から外れたものであり、高尚な絵画の題材にするには適していないと容認されませんでしたが、『聖書』由来の「たとえ話」との口実のもと多く制作されました。このイエスの喩話の主眼は、放蕩の限りを尽くした息子を優しく迎え入れる年老いた父の「寛容な精神」にあるのですが、むしろ居酒屋や娼婦宿での息子を主題にしたいわゆる《風俗画》としての作品も多く描かれました。
実はこの絵はもともと背景にリュートを弾く3人の人物が描かれており、売春宿の様子ももっと具体的に描写さてれていて、もっと大きな作品だったのですが、画家自身の手で左方が切り落とされ、残った部分も一部塗り直されたことが科学的調査によって分かっています。

 

レンブラントの代表作⑥ 『イサクの犠牲』

1635年 193×133㎝  エルミタージュ美術館蔵

旧約聖書の物語「イサクの犠牲」。

イスラエルの民の祖であるアブラハムと妻のサラは長年子宝に恵まれず、年老いてようやく一人息子イサクを授かりました。しかしある時、神がアブラハムの信仰を試すために大切な息子イサクを山上で焼き、我に捧げよと命じます。
迷い苦しんだ末、アブラハムは神に従うことを決断し息子イサクを山上へと連れていきます。そしてその命を奪おうとした瞬間、天使が呼びかけたのです。驚いたアブラハムが顔を見上げると雄牛が藪にかかっていたので、これを息子の代わりに生贄にしたという話。(創世記22章)
この旧約聖書の物語は画題として大変人気がある主題です。
ここで描かれる天使は『神の声』の象徴です。その天使が今まさに息子の喉を切り裂こうとするアブラハムの手を掴み寸前で阻止します。手からはナイフがこぼれ落ちアブラハムは驚いて天使を見上げています。緊張感ある瞬間がドラマチックな陰影法で描かれています。

 

レンブラントの代表作⑦ 『エルサレムの街の崩壊を嘆くエレミヤ』

1636年 58×46㎝ アムステルダム国立美術館蔵
頬杖をついて物思いに耽る老人のポーズは、西洋美術ではしばしば憂鬱な心情のシンボルとして用いられてきました。
エレミヤは紀元前7世紀ごろの預言者で、新バビロニア王朝を築いたカルデア人によるエルサレムの破壊を悼んだ『哀歌』の作者とされています。
左背景で炎上する町がほのかに描かれています。レンブラント初期の作品で劇的な光の効果をすでに完成させていることが見て取れます。

金属の鉢の硬質な質感と外衣の縁の装飾、老人の顔の皺、白い頭髪に髭など、この時期のレンブラント特有の精緻でリアルな質感描写が見事です。

 

 

レンブラントの代表作⑧ 『ダナエ』

1636年 185×203㎝ エルミタージュ美術館蔵

ギリシャ神話に登場するアルゴス王アクリシオスは、ある時自分の娘の子(つまり孫)によって殺されるであろうとの神託を受けました。

恐れた王は、娘を青銅の塔に閉じ込め求婚者たちから遠ざけようとします。しかし彼女を見初めた主神ゼウスが、黄金の雨に姿を変えて塔に侵入し彼女と交わります。

そして彼女は英雄ペルセウスを生むことになるのですが、、。
この主題は西洋絵画でおなじみの画題でありレンブラントの敬愛するヴェネツィア派のティツィアーノも何度も描いています。しかしこの主題において「黄金の雨」をいかに表現するかは画家たちを常に悩ましてきたモチーフでした(ティツィアーノは金貨によって表現しました↓)。

しかしレンブラントは雨を描写せずに窓から差し込む光によってそれを表現したのです。
そしてレンブラントの『ダナエ』は光に呼応して右手を指しだし、その眼差しは愛の期待に満ちた表情でゼウスを受け入れようとしているかのようです。
1985年、この作品はリトアニアの青年に硫酸をかけられナイフで切られるという事件がおこりました。

犯人は「自分はダナエに誘われた」と話したそうですがこのレンブラントの描いた官能的なダナエには本当にそうした力が宿っているのかも知れません。この事件で酷く傷んだ今作は長い修復の末、現在の姿に戻ることが出来ました。

 

 

レンブラントの代表作⑨ 『自画像』

1640年 102×80cm  ロンドンナショナルギャラリー蔵
レンブラントが名声の絶頂期にあった時期の自画像です。
自身に満ちたそのポーズ、衣装、表情などすべてから数ある自画像のうち最も高貴さと威厳が漂う作品です。
余裕と貫録のある視線をこちらに投げかけ、右腕を手前の手すり置いた貴族的なポーズはティツィアーノの描いた肖像画からヒントを得ています。
この頃はルーベンスに対抗してバロック的でドラマチックな表現を極限まで高めた後、ティツィアーノやラファエロらの穏やかで優雅なイタリア盛期ルネサンス的な画風へと舵を切った時代でもありました。


如何でしたか?レンブラントの代表作紹介はその2に続きます。

『オランダバロック~魂の画家』レンブラントの代表作を解説します!

 

【レンブラントに関するこの他のお勧め記事】

・『光と影の魔術師』レンブラント・ファン・レインをご紹介します!

・『光と影のドラマ』レンブラントの生涯を詳しくご紹介します!

・『オランダバロック~魂の画家』レンブラントの代表作を解説します!②

・【油絵を描くなら模写してみよう】レンブラントの技法を徹底解説!

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