こんにちは。管理人の河内です。
今回は印象派の先駆けとなった画家エドゥアール・マネの最後の大作と言われる『フォリー・ベルジェ―ルのバー』について詳しくご紹介してみたいと思います。
この作品は現在(2019年9月10日~12月15日)東京で公開中なのです!
管理人が今年(2019年)最も期待して見てみたい作品が二つありまして、ひとつはスペイン・バロックの巨匠ベラスケス作『青いドレスの王女マルガリータ』(これ↓)
そしてもうひとつがこの『フォリー・ベルジェ―ルのバー』でした。
今作品は、マネが死の前年に友人たちの熱い友情とマネのパリに対する情熱から誕生した最後の傑作と言われています。
今回はそんな傑作『フォリー・ベルジェ―ルのバー』について迫ってみたいと思います。
コートールド美術展の感想レポートはこちらをご覧ください。⇒【必見!印象派の名作がズラリ!】コートールド美術館展感想レポート!
目次
マネってどんな人?
エドゥアール・マネ。1832~83年。
パリの裕福な家庭に育った生粋のパリっ子。印象派の先駆けとして位置づけられる画家。
マネ自身は画家として旧体制のサロンに認められることを生涯の夢としてきましたが、その斬新な手法は認められず逆にスキャンダルの的となりました。
一方で古い権威主義なサロンに反発する若い画家たちからは、尊敬を集め彼らのリーダー的存在に押し上げられます。
彼らは後に「印象派」と呼ばれることになりますが、マネは最後まで「印象派展」には参加せずサロンで認められることを望んでいました。
さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください⇨『保守的革命家』エドゥアール・マネの生涯と代表作をご紹介します!
『フォリー・ベルジェ―ルのバー』とはどんな作品か?
この作品は、1881年から82年に制作されました。
現在はイギリス、ロンドンのコートールド美術研究所に所蔵されています。
マネが死の前年に完成させた最後の大作です。
この作品はサロンに出品されるや大絶賛を浴びました。
描かれているのはその名の通りフォリー・ベルジェ―ルという劇場にあるバー。
フォリー・ベルジェ―ル劇場は、パリのリシェ通りにある1869年に開業した歴史あるパリでもっと人気のあるミュージックホールです(現在も健在)。
ここには夜ごとパリに住む様々な階層の人々が出入りし、ショーを楽しみ、酒を飲んだり食事をしたりして楽しんだパリで最も華やかな社交場でありマネも足しげく通ったお気に入りのナイト・スポットでした。
マネは後年病(梅毒?)で、足の自由が利かなくなりました。
病状は次第に悪化し、医者の勧めでパリ郊外のベルビューに移って療養生活を送ることになります。
しかし都会の喧騒とたくさんの友人たちに囲まれた生活を送っていたマネにとって、そこでの妻と二人の生活は寂しいものでした。
彼は毎日のようにパリの友人たちに手紙を書いたといます。
一年後、マネは医者の反対を押し切ってパリへと戻ります。
そして最後の大作に着手したのです。
彼が選んだモチーフ、それがこの『フォリー・ベルジェ―ルのバー』でした。
ここは当時パリで流行に敏感な人たちが集った場所でした。
生粋のパリジャンだったマネ自身も足しげく通った馴染みの場所、ここにはマネの愛したパリのすべてがあったのです。
マネの左足はすでに壊死しかかっているほどの重傷でしたが、この作品を描くために彼は激痛に耐えながら劇場に通いスケッチをしました。
しかし病状は悪化の一途をたどり、ついに歩けないほどになってしまいます。
それを知った彼の友人たちが、マネのアトリエにバーカウンターを持ち込み、鏡、酒ビン、果物などを設置してバーを再現したのです。
さらには給仕の女性までも店から連れ出しモデルとしました。
こうして熱い友情に助けられ、マネが最後の力を振り絞って完成させたのがこの『フォリー・ベルジェ―ルのバー』だったのです。
『フォリー・ベルジェ―ルのバー』解説
96×130㎝ キャンバスに油彩
画面中央にバーテンダーの女性がカウンターに手をついてこちらを見ています。
手前のバーカウンターの上には鮮やかな色彩と素早いタッチで酒瓶やオレンジが生き生きと描かれマネの技術の高さが見てとれます。
女性の後ろは壁一面鏡張りになっており、右側にはシルクハットを被った客の紳士、遠くには煌びやかなシャンデリアの下で大勢の客が食事や会話を楽しんでいるのがわかります。
作品全体がいわゆる客観的な写実ではなく、マネの得意とした大胆で素早い筆さばきによって、マネ自身が自分の目で見、耳で聞き、肌で感じた臨場感が伝わってきて、まるで劇場の雑踏や音楽、人々の会話まで聞こえてきそうです。
自分が生き、愛したパリの空気、それこそがこの絵でマネが表現したかったことなのだということが伝わってきます。
その一方で、主役であるはずの女性の目はどこか虚ろです。
彼女はシュゾンという名の実際の給仕。マネは彼女をアトリエに招き描きました。
パリの夜の享楽的で華やかな雰囲気とは正反対に、給仕の女性の目はどこか寂し気で憂いを秘めた表情をしています。
実は彼女はバーテンダーとしてだけでなく客に買われる売春の対象でもあったのです。
これまでにもマネは多くの“華やかな大都会の底辺で生きる女性”たちを描いてきました。
マネは自身が上流階級に属しパリの光を愛しつつも、こうした虐げられて人々の現実にも目を向けた画家でした。
この作品でも煌びやかな世界とその影で必死に生きる女性の対比は重要なモチーフになっているのです。
この作品は発表当時から、正面を向く給仕の女性と、背後の鏡に映る彼女の背中、紳士の立ち位置などが現実ではありえない見え方であると批判されていましたが、近年同じセットによる再現検証が行われ、マネは現実を忠実に写したことが証明されています。
『フォリー・ベルジェ―ルのバー』まとめ
いかがでしたか?
近代絵画に新しい道筋をつけ、印象派の先駆的立場であったエドゥアール・マネ最後の傑作『フォリー・ベルジェ―ルのバー』。
作品の背景を知るとますます早く実物を見たくなりますよね。
この作品が見られる《コートールド美術館展》は、9月10日かから12月15日まで東京、上野の都美術館にて開催された後、愛知会場(愛知県美術館)兵庫会場(神戸市立博物館)へと巡回の予定ですのでお近くの方はぜひ実際の作品に会いに行ってみてはいかがでしょうか?
展覧会の詳しい情報はこちらも合わせてご覧ください
・【必見!印象派の名作がズラリ!】コートールド美術館 魅惑の印象派展 感想レポート
・【コートールド美術館展公式ホームページ】https://courtauld.jp/
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