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【魂の叫び!】ムンクの代表作を解説します!

こんにちは。管理人の河内です。
今回は『叫び』でおなじみのエドヴァルド・ムンクの代表作を解説してみたいと思います。
『魂の画家』ともいわれるムンク。

その作品には常に『死』という人間共通のテーマが潜んでいます。

そして性愛や嫉妬など、誰もが心の奥底にもつドロドロした欲望や恐怖、不安といった内面を半抽象的なフォルム(形体)や鮮やかで象徴的な色彩などを用いて表現しようとしました。そのためムンクは美術史的には”象徴主義”と”表現主義”の両方にまたがる画家としても重要です。

さらに精神の奥深くを探求する姿勢は、シュルレアリスムの先駆けとしても見られています。

 

ムンクの代表作① 『病める子』

1885-86年 119.5×118.5㎝ オスロ国立美術館蔵
ムンクが22,3歳の頃に描いた画家の原点ともいえる作品です。
『病める子』は“病気”と“死”というムンク自身の幼い頃の実体験から生まれました。
病床にある「少女」は、ムンクが少年のころに結核で亡くなった姉のソフィエであり、「母親」は彼女を看病する叔母の姿なのです。

ムンクは後に「この絵で私の芸術は全く新しい方向に向かった。それはその後の私の多くの作品の霊感源となった」と述べているように、ムンクにとってこの主題はとても重要で、ムンクはこの主題を油絵だけでなく銅版画やリトグラフなど版画でも繰り返し描いています。
部屋の情景や細部は出来る限り簡略化、抽象化されており、ベッドの少女の蒼白い顔と赤毛のコントラストによって鑑賞者の視線は否応なく少女に引きつけられます。

病床で死を待つばかりの少女ですが、その目は虚ろでありながらどこかほほえみを称えたような表情をしています。傍らで我が子の手を掴み、がっくりと肩を落としうなだれる母親はそのポーズだけですべてが伝わってきます。

明暗のコントラストと赤と緑の補色のコントラストを巧みに使い、大胆で荒れた筆致、そしてペインティング・ナイフで引っ搔き痛めつけられたキャンバスによって劇的な印象が強まっています。

 

ムンクの代表作② 『思春期』

1894~95年 151.5×110㎝ オスロ国立美術館蔵
今作品は1886年にムンクが23歳の時に描いた作品が、火災で焼失したために描き直された作品です。
大人の女性になる前の未熟な体つきの少女が、暗い部屋の中で両足の間に腕を組み、股間を隠すようにしてベッドに腰かけています。
手の甲やシーツに赤い色があることから初潮を迎え大人に近づく段階を示していると言われています。
少女の目はじっとこちらを見つめ、大人になることへの不安に怯え慄いているようです。
少女の背後には明らかに少女のシルエットとは違う影が揺れ動き、それが彼女の内面の怖れや不安を暗示しているのです。

 

ムンクの代表作③ 『叫び』

1893年 91×74㎝ オスロ国立美術館蔵
ムンク芸術の代名詞です。
ムンクは自身の芸術について作品だけでなく多くの言葉を残しています。
「ある夕方、私は道を歩いていた。片側は市街で眼下にフィヨルドが広がっていた。私は疲れていて気分がすぐれなかった。…日が沈んでいくところで、雲が血のように赤く染まった。私は自然を貫く叫び声を感じた。叫び声を聞いたように思った。私はこの絵を描いた。雲を本当の地の色で描いた。色が叫んでいた」このようにムンクは『叫び』について書いています。

一般的にはこの人物が「叫んでいる」と思われがちですが、こうしてムンクの手記を読んでみるとそうではなく、ここでいう『叫び』とは『自然を貫く』声であり、『色』の叫びであるなど様々な意味合いがあることが分かります。
それらはすべてムンク自身の幻聴だったのかもしれませんが、その時彼が感じた不安、恐怖はムンクにとってリアルであったのです。そしてこうした理由のない不安や恐怖は多かれ少なかれ誰しもが抱いた経験があるのではないでしょうか。

真っ赤に染まった空と不気味に青黒い海は大きなうねりとなり、極端な遠近法で描かれた橋の直線と激しいぶつかり合いが不安をより一層あおっています。

 

ムンクの代表作④ 『不安』

1894年 94×73cm ムンク美術館蔵
複雑に入り組んだフィヨルドと、血のように赤く染まった空。
1902年のベルリン分離派展でムンクは『生命のフリーズ』を構成するために入口のホールを取り巻く四方の壁に一連の作品を展示しました。
この《不安》は“生の恐れ”を表す壁面に、《叫び》と一緒に掛けられました。
ムンクは「そこにはシンフォニーのような効果が見られた。大変な反響で、多くの反感を生んだが、多くの賛同も得た」と書いています。

この作品でも『叫び』や『絶望』と同じ背景を舞台に、人々の心に潜む生の不安を描かれています。
青ざめて生気のない単純化された人々が、橋の上で列をなしてこちらに歩む様子は墓場へと向かう葬送の列ようでもあります。幼い頃に母と姉を失くし自身も病弱だったムンクにとって死は最大の不安を生む元であり常につきまとう不安でした。

 

 

ムンクの代表作⑤ 『マドンナ』

1894~95年 91×70.5㎝  オスロ国立美術館蔵
裸体の女性が両腕を背中に回しまるで男性を誘惑するようなポーズをとっています。

この生々しい性的な情感を漂わせているこの女性は様々な解釈がされていますが、このポーズは古代ギリシャ彫刻の『瀕死のニオベ』からとられたと言われています。
彼女のエロティックな裸体と恍惚の表情は、彼女がオルガズムのただ中にあることを感じさせ「マドンナ(聖母)」からはかけ離れたイメージを抱かせますが、この絵が最初に発表されたときは精子と胎児を描いた額縁に取り付けられていたそうです。それらはリトグラフや銅版画には作品に直接描き込まれているため一目瞭然ですが、これを「愛と胎児」と捉えるならばやはり「マドンナ」でもあるのです。
また一説では
19世紀末に画家たちの間で流行した《ファム・ファタール(宿命の女、男を惑わし破滅させる女)》のイメージをもとにムンク独自のマドンナ=女性像を表現しているともいわれており、今作もまたいろいろな解釈がされています。

 

ムンクの代表作⑥ 『煙草を持つ自画像』

1895年 110.5×85.5㎝ オスロ国立美術館蔵

ムンクはその長い人生において多くの自画像を残した画家でもありました。
一般的に画家にとって《自画像》は特殊な意味を持ちます。
普段は外部に向けられた視線を自身に向きを変え内面を見つめなおすという意味で特別な意味付けをされることが多いのですが、ムンクンの場合は少し事情が違います。
ムンクは「私の芸術は、私の魂を剥き出しにさせた」と言っているように、自画像だけが特殊な役割を与えられているわけではなく彼の作品すべてが自画像であり「私の日記」なのです。
この自画像は、ムンクが30代に入って間もない頃のものです。
下からの光に照らし出され異様な表情と煙草を持つ手が浮かび上がっています。
ゆらめく煙だけでなくムンクの体全体が亡霊のように闇の中に揺れ動いています。

 

 

ムンクの代表作⑦ 『生命のダンス』

1899~1900年 125.5×190.5㎝  オスロ国立美術館蔵
ムンクが愛と死をテーマに取り組んだ《生命のフリーズ》と呼ばれる作品群の中心的作品であり大きさも最大のものです。
複数の男女が踊るこの情景はオスロ南方の町オースゴールストランの夏至祭りのダンスをモチーフにしています。
今作品の背景にもムンクの個人的な恋愛体験があると言われています。
画面中央の男性がムンク自身であり相手をする赤いドレスの女性は画家が「私の最初の恋人」と呼んだかつての愛人で、弁護士の妻だったミリー・ベルクと思われます。
前列の3人の女性が身に着ける衣装の色、白、赤、黒はそれぞれ“無垢”“官能”“死”または“少女”“成年”“老年”という人生の三段階を表し“処女”“娼婦”“修道女”という女性の三相を表しています。

 

ムンクの代表作⑧ 『嫉妬』

1895年 66.8×100㎝  ノルウェー ベルゲン美術館蔵
《生命のフリーズ》の初期の作品です。
密会する男女と女の夫という三角関係を主題にしています。
情熱。嫉妬、誘惑というテーマを聖書のアダムとエヴァになぞらえた寓意的作品です。

前景に大きく描かれた男の顔は蒼白で目は嫉妬に凍りついています。
遠景では女性が赤い衣の前をはだけ、禁断の果実を男にすすめる誘惑者イヴとして描かれています。
前景の男は、ムンクの友人であるポーランド人のスタニスラフ・プシビシェフスキー。この主題はムンク自身の経験―ムンクとプシビシェフスキーとその妻ダグニー・ユールとの三角関係-に元づいていると考えられています。

 

ムンクの代表作⑨ 『桟橋の上の女たち』

1899年 125.5×136㎝ ノルウェー オスロ国立美術館蔵
北欧の明るい夕暮れ時、たそがれがフィヨルドの水面に移りはじめる静寂の中で、橋の上の少女たちが水面を見下ろし寂しげな感情で静まり返っています。

画面を対角線に走る橋の欄干の直線と水面と土手の縁が作る曲線のコントラストは『叫び』と同じ構成ですが、この「驚くほど急進的な遠近法の短縮」は『叫び』では悲劇的空間を産み出しましたが、ここでは「遠い視界を憧れ慕う親しみある性格を帯びている」とオットー・ベネシュは言っています。

この作品はオスゴール海岸地方で女流画家アース・ノールガルド姉妹をモデルにした代表作のひとつです。ムンクは1901年以降、周囲の風景をさらに大きくしたりこれに男性を配したりした作例をいくつか制作していて、自らの言う『芸術は結晶作用』のプロセスの具体例を示しました。

 

 

ムンクの代表作⑩ 『太陽』

1909~11年 452×787㎝ オスロ大学蔵
この作品はオスロ大学講堂に描かれた壁画で、ムンク最大の公共作品です。
ムンクは霊感を受けたような大胆さをもってこの作品を仕上げました。
精神的肉体的苦悩の時代を過ぎて心身の健康を取り戻したムンクは、オスロ大学講堂の壁画コンテストに応募します。紆余曲折の後1914年この仕事は見事ムンクに委嘱され1916年に完成させました。
この作品は大小合わせて全11面の連作壁画の中心的作品です。
それまでの暗い闇を一切感じさせない明るく暖かな世界です。太陽は自然と生命の根源であり永遠の力を表し、その陽光がクラーゲリョーのフィヨルドの海と巨大な岩だらけの風景を照らしだしています。

 

 

ムンクの代表作⑪ 『時計とベッド間の自画像』

1940年ごろ 149.5×120.5㎝  オスロ市立ムンク美術館蔵
年老いたムンクの自画像です。
場所はおそらく自室でしょう。大きな柱時計とベッドに挟まれ呆然と立ち尽くしています。
その表情は単純化されてはっきりと読み取ることはできませんが、幾分顎をあげ禿げた頭に白髪まじりの髪、その曲がった膝と脱力した体から老いを感じます。
針のない時計からは時刻は判別できず、動いているのか止まっているのかも分からず時間の象徴としてそこにあるようです。
開かれたドアの向こうは暗く不気味な感じです。
ベッドの模様の鮮やかな赤と黒のコントラスト、壁紙の黄色、そこに描けられたオレンジの絵画などが人物の暗く逆光のようなシルエットが強調されています。
このコントラストがなすすべもなく立ち尽くし死を待つ老人の漠然とした不安を強調しているようです。ムンクは「私は生まれた時にすでに死を経験していた。真の誕生、すなわち死と呼ばれるものが、まだ私を待っている。」ということばを残していて、迫りくる運命を受け入れようとしているのかも知れません。

 

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