こんにちは。管理人の河内です。
絵画技法シリーズの第1回目として取り上げるテーマは『油絵具の買い方・選び方』についてです。
管理人の教えている絵画教室でもそうですが、こと“描き方”については丁寧に指導しますが、画材については初めて購入したときにある程度まとめてお話をするだけになりがちです。
後は授業の会話の中でちょいちょい説明するだけで、描く方に集中してしまって生徒さんの記憶にもあまり残らないようなので、ちょっとここでまとめてご紹介したいと思います。
はじめて油絵を描こうとしたとき、当たり前ですがまず道具をそろえなければなりませんよね。
教室やカルチャースクールで始められる方はそこで指定された道具セット買う方が多いと思います。実際管理人のアトリエでもそうしています。
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一般的には“画箱”という木の箱に入ったやつですが、これを見るとどことなく重厚な雰囲気があって敷居が高く感じられてしまい、そのため油絵に二の足を踏んでしまう方もいらっしゃいます。
一方でいよいよ本格的に絵を学ぶぞ~と気合が入る方もいらっしゃると思います。
さてその一般的な画箱には大体12~5色の絵具セットが入っています。
最初はそれを使って描き始めていくことになります。
しかし、しばらくすると絵具が無くなったり、混色では作れない新しい色が欲しくなったりして新たに買う必要が出てきますよね。
使い切ってしまった分は、また同じものを買えばよいのでそれほど問題はないと思います。
白などのようによく使う色は大きいサイズにしても良いかも知れません。
ですが、もともとセットに入っていなかった色についてはどうでしょうか?
いざ画材屋さんにいっても棚にはズラ~っと同じような絵具が並んでいて圧倒されてしまい、どれを選んだらよいか迷いますのよね。
ここからはそうしたことにならないように、具体的にポイントをまとめてご紹介していきたいと思います。
目次
絵の具選びのチェックポイント① 油絵具のあれこれ
画材屋さんに行くと絵の具の種類の多さにたじろぎますよね。
まずはそれを大きく分けると、海外メーカーのものと日本メーカーのものがあります。
国内メーカーと言えばホルベイン、マツダ、クサカベが三大メーカーでどれも品質は問題ないですし色とサイズが同じであれば金額もほぼ変わりません。(そのほかターナーなどもあります)
では海外メーカーはどうでしょうか?
有名どころでウィンザーニュートン、ヴァン・ゴッホ、レンブラント、ルフランなどがありますが値段は国内メーカーに比べて割高となっています。
輸入関税の部分もあるのかもしれませんが、総じて色の発色が強い傾向にあります。
また体質顔料(※)が日本メーカーに比べて少ないせいか絵具がゆるい(柔らかい)感じがします。
※体質顔料とは・・・主に炭酸カルシウムなどを使った増量剤のことで、油絵具特有のぼってり感を出す要素です。これが多いと相対的に顔料の比率が下がりますので色の発色は落ちます(その分値段が安くなる)。
なので海外ものの方が、発色が良いということになりますがそこは好みの問題かもしれませんが、管理人自身もう何年も海外ものは使っていないので厳密には言えませんが国内メーカーの発色が悪いという訳ではありません。
取り扱いは専門店に限られているかも知れませんが、今の時代ネット通販で買えますので気になった方は試してみてください。
また昨今のブランド志向の流れでしょうか、国内絵具メーカーも続々と“高級”絵具を発売しています。
各社力を入れた“ギルド(クサカベ)” “ヴェルネ(ホルベイン)”や“東京芸大とホルベインが共同開発した”油一”など高級で専門家仕様をうたった商品を出しています。
管理人が学生の頃は国内メーカーではマツダのスーパーくらいしかありませんでしたが…
こうした絵具は顔料の組成から違うので発色の違いは明らかですが、まあお金があって本物志向の方はどんどん高い絵具を使っていただくとして、ここでは標準的なものについてお話してみたいと思います。
絵の具選びのチェックポイント② 同じ名前でも違う色がある。
ここから絵具を買う時の具体的な注意点をご紹介します。
まず初めは、メーカーによって同じ名前の色でも随分色の感じが違うことがある!ということです。
なので同じ色が欲しい時は、最初に買ったセットと同じメーカーのものを買うようにしてください。
厳密には同じメーカーでも多少のばらつきがありますが気になるほどではありません。
特にテールベルトという渋い緑色があるのですが、これはその代表的なもので、ホルベインとクサカベでは全くの別色になっています。
油絵具選びのチェックポイント③ 絵具の帯の色見本を信じるな!
御存じのように絵の具のチューブには紙の帯(ラベル)が巻かれています。
そこにはその絵の具がどんな色なのか、名前やグレード注意書きなどが細かな字で書かれています。
でも油絵具の色の名前ってすべて横文字、しかも~~レッドとか・・・・ブルーとか書いていればまだイメージはできますが“クリムソンレーキ”とか“バーントシェンナ”とか言われても初心者の方にはピンときませんよね。
残念ながらこれらは西洋式の顔料の名前だったり土地の名前なので変えるわけにもいかず少しずつでも慣れていただくしかありません。
なので皆さん色を選ぶ基準はそこに塗られた色を見て絵具を選ぶわけですが…
実はそこに落とし穴があるのです。
画材店の絵具売り場にはたいてい色の見本が貼られています。
このチューブはこういう色ですよと示してくれているのですが、そこはすこし疑ってかかる必要があります。
いくら見本といってもそこは印刷物。まったく同じ色が出ているわけではなく多少のずれは必ずあります。
さらに店頭の見本自体が色褪せてしまったりしている場合もあるかもしれません。
本当はキャップを開けて直に絵具を見られれば良いのですがそうもいかず・・・
特に暗い色の場合はたとえキャップを開けてみたとしても良く分かりません、、
買って帰っていざ使おうとするとアレっ?てこともありますがそこは経験を積むしかないでしょうね。
教室などに通っている方は、すでにたくさん色をもっている先輩に見せてもらうのが良いかもしれません。
油絵具選びのチェックポイント④ 間違いやすい色
初心者の方が間違いやすいところとして、名前が似ている、あるいは同じ名前の下の句(?)が違うものがありますので注意しましょう。
例えば、『パーマネント・イエロー』。ここまでは同じでもそのあとに『ディープ』や『ライト』『レモン』なんていうのがくっついている場合があります。
『ジョンブリアン』なんていう薄いピンク(オレンジ?)系の色はなんと!No,1~No,4までありますので最後まで確認して買うようにしてください。
油絵具選びのチェックポイント⑤ 絵の具は色によって値段が違う!
ひとくちに油絵具と言ってもその色数は100種類以上もあります。
それらは国内メーカーでは色名と大きさが同じであればほぼ値段は変わらないのですが、実は色ごとにランクがあることはご存知でしたか?
管理人の教室の生徒さんも、ご自身で絵の具を買ってこられた場合、色の名前に気をとられて値段を気にせず、レジで「えっ?そんなに高いの?」とびっくりされる方もいらっしゃいます。
これはチューブのラベルに記されているアルファベットによって分けられていますので是非チェックしましょう。
例えば上の写真のようにAとあれば一番下のランクです。
これがB→C→D・・・Hなどアルファベット順が下っていけばより高価な絵具になるという訳です。
ちなみに55mlサイズのチューブではAが360円(税抜き)、Eでは710円という倍の価格になり、最高ランクのHでは2000円(税抜き)になり、同じ大きさでも5倍以上の開きがあります!(クサカベ絵具 2019年2月現在調べ)
ではこの値段の違いはなにかといいますとズバリ原材料費、つまり顔料の値段=希少性ということになります。
天然の鉱物から採取されるような顔料は目が飛び出るほど高価で、逆に土や化学合成で大量に作られるものは安価というわけですね。
良く知られた例ではかのフェルメールが愛した青色、フェルメール・ブルーとまで言われる色は“ウルトラマリン・ブルー”という名前ですが、これは当時アフガニスタンでしか採掘されないラピスラズリーを砕いて作られたもので、当時は金と同じ価格で取引されていたほどでした。そのためフェルメールはこの色を使うために多額の借金までしていたという説があるほどです。
フェルメール・ブルーのいついてはこちらに記事がありますのでよろしければご一読ください。
今回はとりあえずここまで。
その2に続きます。
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