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ゴッホ展2021  響き合う魂ヘレーネとフィンセント レポート Collectinng Van Gogh: Helene Kroller₋Muller’s Passion

こんにちは、管理人の河内です。

今回は約1年以上ぶりの展覧会レポートとなります。

昨年より続くコロナ禍によって多くの展覧会が中止や延期を余儀なくされる中、私を含めたくさんの美術ファンの方が生で名作を見ることに飢えていること思います。

10月から長らく出されていた緊急事態宣言が終了し、季節も良いことから多くの美術ファンがお出かけになられると思いますがしっかりと感染対策をして美術館に足を運んでいただければと思います。

では待望のゴッホ展やいかに?管理人の私的感想も含めてレポートしてみたいと思います。

目次

ゴッホ展① 展覧会概要

今回レポートするのは東京会場で開催中の様子です。

概要は以下の通りです。


会場:東京都美術館企画展示室

会期:2021年9月18日(土)~12月12日(日)

月曜・9月21日(火)休館 ※9月20日(月・祝)、9月27日、11月8日(月)、11月22日(月)11月29日(月)は開室

開室時間:9:30~17:30(入室は17:00まで)

展覧会公式サイト:https://gogh-2021.jp/

館展覧会の問い合わせ: ハローダイヤル 050-5541-8600

主催:  公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館、TBS、東京新聞特別協賛

入場料:一般2,000円 大学生・高校生1,300円 高校生以下無料ですが小学生以上は日時指定予約が必要。 65歳以上1,200円

今展覧会も入場券は日時指定のネット予約販売となっています。

当日券も一部販売されているようですが、こちらのツイッターで情報を発信しているようなので、当日券をお考えの方はご確認ください。

https://art-ap.passes.jp/user/e/gogh-2021

https://twitter.com/vanGogh_ticket

展示内容:

オランダ、クレラー=ミュラー美術館所蔵のゴッホコレクションからパリ時代の作品《レストランの内部》、アルル時代の《種まく人》サン=レミ時代の8《夜のプロヴァンスの田舎道》など油彩画28点、素描・版画20点を展示。そしてアムステルダムのファン⁼ゴッホ美術館から《黄色い家》など4点が出展。

その他ミレー、ルノワール、スーラ、ルドン、モンドリアンらの作品20点も展示されています。

 

ゴッホ展② クレラー=ミュラー美術館Kröller Müller Museumt とは?

ではまず初めに、今回の展覧会出品作の柱となる作品を所蔵しているクレラー=ミュラー美術館について見ておきたいと思います。

クレラー=ミュラー美術館は、オランダのヘルダーラント州、デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園内のオッテルロー村にあります。

実業家のアントン・クレラー・ミュラーと、その妻ヘレーネ(ヘレン)・クレラー・ミュラー夫妻が1908年当時、まだまだ世に知られていなかったゴッホの作品に魅了され約20年にわたって90点を超える油彩画、180点の素描、版画を収集し世界最大のゴッホコレクションを形成しました。

これをもとに1938年クレラー=ミュラー美術館が開設され、ヘレーネは初代館長を務めました。

大もとのクレラー・ミュラー美術館のサイトではこのように紹介されています。『クレラー=ミュラー美術館はフィンセント・ファン・ゴッホの第二の故郷です。約90点の絵画と約180点の素描を所蔵する当美術館は、世界で2番目の規模のファン・ゴッホ・コレクションを所有しています。』https://krollermuller.nl/jp/fan-gohho-gyarari

ゴッホ展③ 展示の流れ

今回私が見てきた会場は、上野恩賜公園内にある東京都美術館(通称:都美館)です。

行かれたことのある方はご存じかと思いますが、この都美館は地下が入り口となっているためいったんエスカレーターで地下におりますので展示会場のスタートも地下階からとなりその後1階(地上階)、2階へと進んでいきます。

1芸術に魅せられて / 2ヘレーネの愛した芸術家たち:写実主義からキュビズムまで

ではまず地下、最初にヘレーネの肖像画に続きゴッホ「療養院の庭の小道」がお出迎え。

その後は、ゴッホはひとまずお預けでミレーやルノワール、スーラなど写実主義から印象派、そしてキュビズムのブラック、抽象画のモンドリアンまでゴッホ以外で19世紀後半から20世紀美術の流れを見せてくれます。

一人の画家につきほぼ一点ずつでなかなか良い作品もありました。

個人的にはルドンの代表作「キュクロブス」やモンドリアンがまさかゴッホ展で見られたことが嬉しかったですね。

3ファン・ゴッホを収穫する

3-1素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代

ここからはエスカレーターで1階に上がります。

ここではゴッホが故郷オランダで画家を志して絵の勉強を始めたころの作品が並びます。

画家への第一歩はまず素描(デッサン)から、ということで紙にペンやインクを使った素描、主に人物画が多く粗削りですがこの時点ですでにゴッホらしさが見て取れます。

 

3-2 画家ファン・ゴッホ、オランダ時代


ここではゴッホがデッサンから油絵を描き始めたころの作品が並びます。

ゴッホまずは親戚筋の画家に油絵の手ほどきを受けたあと、バルビゾン派や地元の画家たちの影響を受けかなり暗い雰囲気の静物画や風景画を描きました。テーマとしてはゴッホ前期の代表作「ジャガイモを食べる人々」へと続く当時の苦しい農民生活を描いています。

 

3-3 画家ファン・ゴッホ、フランス時代

 

こちらのコーナーではゴッホがいよいよパリに出て本格的に画家として活動する時期の作品が並びます。

最先端のパリでオランダ時代の画風がすでに古いものだと認識したゴッホは、印象派や新印象派の画家たちとの交流を経て明るい色調と、アドルフ・モンティセリの影響で後の荒々しい画風につながるタッチを生かして描く画風が生まれてきました。

そしてこの階の最後には、特別出品としてアムステルダムのゴッホ美術館より代表作「黄色い家」、ゴッホにしては珍しい海の絵「サント=マリー=ド=ラ=メール」など4点が展示されています。

管理人は学生時代、実際にアムステルダムのゴッホ美術館に行ったのですがその時の感動は覚えていますが、個々の作品の記憶は薄れていたので改めて「黄色い家」を見たときにその大きさと遠景に汽車が走っていたこと発見しちょっと嬉しくなりました(*^^*)

3-3-2アルル、3-3-3 サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ

ここから最後の2階会場となります。

この展示ではいわゆる多くの方がイメージするゴッホらしいゴッホが並びます。

南仏アルルの強い陽光と青い海、青い空、パリにはない明るい日差しによってゴッホの色彩は彩度を増しさらに精神の病によって激しさを増した筆致、これらが結びついて一気にゴッホワールドが花開いた時代です。

有名なエピソードである前述の「黄色い家」でゴッホは希望に満ちて芸術家仲間によるコロニーを作ろうと準備しますが、来たのはゴーギャンだけ、そのゴーギャンもかの「耳切り事件」で2か月で破綻しました。

希望と絶望でゴッホはさらに精神を病み、自ら入院をするなど過酷な時代でもありましたが、時折襲う激しい発作と闘いながらゴッホ芸術が頂点を極めた時代でもありました。

このあたりのエピソードにつきましては、こちらの記事に詳しく書いてありますので合わせてご覧ください。

 

ここで今回の展覧会のメイン「夜のプロヴァンスの田舎道」が最後に登場します。

ゴッホ展④ 管理人的感想

ざっくりと今回の「ゴッホ展」の展示を順路を追って見てきましたが、ここで管理人的感想を述べてみたいと思います。

初めにも書きましたように、このコロナ禍で一年もお預けを食っていたこともありますが、はやり単純にゴッホは何度見ても良いですね(*^_^*)

もちろんすべてが傑作というわけではありませんが、何度見ても感動します。

今展では「ひまわり」ほどの有名な作品が来ているわけではありませんが、オランダ時代から晩年までの作品を通して見られることでゴッホがどのような道をたどってゴッホになったのかを俯瞰して見られますし、解説なども読むとゴッホもただ感情に任せて絵を描いていたのではなく、かなりいろんな画家の影響を受けいたり、アカデミックな勉強もしていたことがわかり興味深いですね。

個人的に強調したいのはあの激しい色彩やタッチに目が行きがちですが、絵はそんな単純なものでは描けません。

それらが激しければ激しいほど一つの画面上でバランスを取り作品として成立させるのは難しいのです。

ゴッホがそうした“強い表現”をしつつもそれを可能にしているのはやはり“中間色”です。

特に今回出品されている作品で分かりやすいのが「レモンの籠と瓶」ですが、鮮やかなはずのレモンやテーブルに敷かれた布、背景の壁などがかなり優しい色使い、繊細で調和のとれた中間色で描かれています。

これは代表作「ひまわり」や「自画像」でも同じで、管理人はいつもこの激しさとは真逆の「柔らかさ」「やさしさ」に惹かれます。

「ひまわり」(注)今回は出品していません。

ゴッホには精神病や激情型の性格により感情をたたきつけたようなイメージをお持ちの方も多いとは思いますが、今回ゴッホをご覧になられる方は改めてそうしたゴッホの繊細さを見ていただければと思います。

今展覧会はそれほど作品数は多くはありませんが、一点ずつじっくり見るのには良い数ですのでぜひ近づいてご覧いただければと思います。

ゴッホ展まとめ


いかがでしたか?

ご存じのようにゴッホは生前には絵がたった一枚しか売れず、亡くなる少し前から注目する人も出てきましたが、ほとんど世間に知られることなく消えていった可能性もあったわけですが、このクレラー=ミュラー夫妻のような情熱と財力、本当の価値を見抜く人達によって“発見”されたことで100年以上たった現代の私たちもゴッホに出会えているということは一つの奇跡といえますね。

コロナ禍が続いてストレスの多い今こそ感染対策をしっかり行った上で、ゴッホの名画に触れて改めて芸術のすばらしさや重要性を感じられてはいかがでしょうか?

 

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