こんにちは。管理人の河内です。
今回は現在、東京・六本木にある国立新美術館で開催中の展覧会《ウィーン・モダン クリムト、シーレ世紀末への道》を見てきましたのでそのレポートになります。
この展覧会も前回ご報告した《クリムト展》と同じく今年が日本、オーストリア国交樹立150周年を記念して行われる催し物の一環ですね。
《クリムト展》のレポートはこちらにありますのでまだお読みでない方はぜひご覧いただければと思います。⇒【展覧会レポート】クリムト展 ウィーンと日本 1900
目次
ウィーン・モダン①【展覧会概要】
会場:国立新美術館 企画展示室1E
期間:2019年4月24日(水)~8月5日(月)
休館日 毎週火曜日
開館時間: 10:00〜18:00※毎週金・土曜日は、4・5・6月は20:00、7・8月は21:00まで。 4月28日(日)〜5月2日(木)と5月5日(日)は20:00まで開館。
5月25日(土)は「六本木アートナイト2019」開催に伴い22:00まで開館。※入場は閉館の30分前まで
観覧料金:一般1600円 大学生1200円 高校生800円
公式ホームページ:https://artexhibition.jp/wienmodern2019/
ウィーン・モダン② 展示構成~見どころ
この展覧会ではウイーン世紀末の”美術”というより、そこに至るまでの18世紀中ごろまでさかのぼって、ウィーンがいかに芸術都市となったかその背景を包括的に紹介しています。
ヨーロッパ有数のウィーン・ミュージアムの改修に伴い同館から、また個人所有の作品など絵画、建築、工芸、ファッション、インテリア、デザインなど約400点を展示。さらに当時の資料や映像を使って分かりやすく紹介しています。
会場は4つのセクションに分かれています。
1 啓蒙主義時代のウィーン―近代社会への序章
2 ビーダーマイアー時代のウィーン
3 リンク通りとウィーン
4 1900年―世紀末ウィーン―近代都市ウィーンの誕生
絵画だけに絞って言うと、それぞれセクションごとに展示はあるものの、歴史資料的なものがほとんどで、後はクリムトたちの素描や原画などです。
いわゆるお目当ての“ウィーン世紀末”的な油絵はほぼ後半に集中しています。
途中の休憩室で、文化服装学院の学生さんたちが再現制作したクリムトの《エミーリア・フレーゲルの肖像》でエミーリアが着ているドレスと彼女にインスパイアされて学生さんがデザインしたドレスが展示されていました。
ウィーン・モダン③ 出展作品
ウィーン・モダン④ 私的感想
残念ながら今回のウィーン・モダン展は、正直美術展としてはあまり期待していませんでしたが、その通りでした。
クリムトはじめエゴン・シーレやオスカー・ココシュカなど数十点が来日するということでしたが、そのほとんどが素描や下絵・ポスターなどで、油絵はわずかだったからです。
クリムト、シーレは無類の素描家ですのでそれでも楽しめるのですが・・・
ですがもっと視野を広げ、18世紀から19世紀にかけて、西ヨーロッパに遅れながらも独自の近代化を果たしたウィーンの “芸術の都”への成り立ちが俯瞰して見られたことは貴重な体験でした。
フランスが市民による革命を通して下からの近代化を果たしたことはよく知られていますが、オーストリアは皇帝ヨーゼフ1世という優れた人物による上からの近代化ということを知り“ヨーロッパの近代化”といってもお国によってずいぶん事情がちがうものだなぁと新ためて勉強になりました。
またハンス・マカルトというクリムトより前のウィーンの重鎮画家の作品が初めて見られたのは良かったです。
彼の豪華で装飾的、耽美的な雰囲気が、続くクリムトに受け継がれたことで世紀末の妖艶なで退廃的なムードが生まれたのだと強く感じさせてくれます。
しかしやはりシーレとココシュカの油絵作品がもっと見たかったというのが本音のところです。
管理人が浪人時代(もう約30年も前ですが)エゴン・シーレの大回顧展がありました。
管理人を含めそれを見た当時の学生でシーレに感化され、一時のシーレ・ブームが起こったほどです。
自分が若かったこともあり、シーレやココシュカの絵から受けたなんとも言えない怪しいエロティシズム、どこか悲しくも病的な印象は今でも忘れられません。
シーレはわずか28歳で夭逝した天才ですが、それまで自分たちが勉強していたセザンヌやピカソなどとは全く違う彼の表現は、技法ではなく直接心に訴えかける凄みがありました。
そしてシーレから同じ世紀末表現主義のオスカー・ココシュカを知り、感激して二人ともなけなしのお金をはたいて2万円ほどもした画集を買いそれは今でも私の宝物です。
最近はめっきりこれらの作品にお目にかかる機会がなくなりましたが、ぜひまた企画してほしいですね。
ウィーン・モダン まとめ
この展覧会は、美術展というよりはもっと広く18~19世紀末のウィーンの街や文化全般とその歴史を包括的に紹介する展覧会と言えます。
なのでクリムト、シーレを楽しみにされている絵画ファンにとっては物足りない展示と言えますが、そのほか建築やファッション、デザイン、工芸などその変遷などに興味のある方にはとても興味深い展覧会だと思います。
また歴史好きの方にも日本が幕末から明治に代わり激動の時代だった同じころオーストリアも同じように激変する中で両国が友好関係を結んだことなどに思いを馳せるのも楽しいと思います。
特に1873年のウィーン万博は、明治新政府が初めて正式に参加した万博であり、そこでの成功がジャポニズムとなってクリムト達ウィーン分離派に大きな影響を与えたことも興味深いところです。
今展覧会は会期終了後、大阪に巡回します。
会場:国立国際美術館 (大阪・中之島)
会期:2019年8月27日(火)~12月8日(日) 月曜休館
http://www.nmao.go.jp/
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