こんにちは。管理人の河内です。
今回は水彩画の筆の選び方について解説していきたいと思います。
皆さん普段どのような基準で筆を買われていますか?
ネットで調べても画材屋さんに行っても、あまりにも種類が多くて途方に暮れている方も多いのではないでしょうか。
今回はそんなお悩みを少しでもクリア出来るように、管理人が実際に使ったものをベースにお勧めの筆、初心者がまず初めに買うべき筆をズバリご紹介していきたいと思います。
目次
まず筆の重要性について触れておきたいと思います。
水彩画を描く上で、道具を選ぶときに最も重要になるのが紙=水彩紙です。
これはこちらの記事で詳しくご紹介していますのでそちらも合わせてご覧ください。⇒ 【水彩紙の選び方】コスパ・レベルごとにおすすめの水彩紙をご紹介します!
その次に重要なのが筆です。
「弘法筆を選ばず」と言いますが、絵画、特に水彩画においては筆の形状、材質の違いがそのまま表現の違いとなってきますので、ここはしっかりと選ばなければいけません。
ご自分が描きたい絵はどのようなタイプなのかによって全く選ぶべき筆が違ってくるからです。
例えば水彩画特有の”にじみ”や”ぼかし”を使った表現がしたい場合は、リス毛や山羊毛などの柔らかくて水分の含みが非常に良い筆でないとこうした表現は出来ませんし、反対にシャープな線描やボタニカルアートの様な繊細な描写がしたい場合はイタチやコリンスキー、ナイロンなどを使います。
では無数にある筆は何が違うのでしょうか?
その一番大きな分ける基準としては、「材質」と「形状」になります。
どのような材質(材料)で作られているのか?と、どのような形をしているのか?
ここからはそれらの代表的なものをご紹介してみたいと思います。
水彩画用の筆の材質は、大きく分けて3通りあります。
① 天然毛・・・動物の毛(獣毛)
② 人口毛・・・ナイロン(化学繊維)
③ 混合毛・・・①と②の混号。
①の天然毛は、以下にご紹介する通り様々な動物の毛が使われています。
その動物の希少性などから値段はほんとにピンキリです。
安いのが馬、高価なのがイタチなどセーブルと呼ばれる毛です。
②の人口毛はいわゆる大量生産できる工業品なのでお値段は安価ですが、かといって安かろう悪かろうということはなく、天然毛の良い部分を模し、逆に悪い部分を改善するようにも考慮されているので実は使い勝手がよかったりします。
③は両者を組み合わせたいいとこ取りですね。
もちろんベテランの方やプロの方に言わせれば『天然毛がいいに決まっている!』という方もいらっしゃるとは思いますが、ここではあえて初心者向けに解説しておりますので、そう考えるとまったく人工毛でも問題なしと言えると思います。
では動物の毛といっても何でもよいというわけではありません。
一体どんな動物の毛が筆に向いているのでしょうか?ここで伝統的によく使われている代表的なものをご紹介しましょう。
▶イタチ・・・柔らかい毛質で保水性も良い高価な獣毛。ロシアや中国のものが優れていてコリンスキーと含めてセーブルと呼ばれます。
▶コリンスキー・・・イタチと同用軟毛ですが、より高価な獣毛で軟毛では最高級品。
バネのような弾力性があり穂先のまとまりや絵具の含みがとても良い。
▶馬・・・水彩筆としては最も一般的。小学生が使う筆は馬が多い。大変安価なものから高価なものまで幅広い種類があります。
▶リス・・・非常に細い毛で柔らかく、弾力やコシはありませんが水分の含みが非常に良い。
▶狸(ラクーン)・・・軟毛系として広くつかわれています。 柔らかく絵具の含みが良いので薄くデリケートに塗りたいところで使います。毛の根元が細く先が太いので筆も先の方がふっくらとした形状をしています。
▶山羊・・・日本画用の筆でよく使われます。 とても水分の含みが良く消耗度も低いのでいろいろな表現ができます。
では逆に人口毛は具体的にはどのようなものなのでしょうか?
それはいわゆる化学繊維(ナイロン)です。大量生産ができるので安価に手にいれることができます。
ナイロンの特徴は、天然毛に比べ弾力性(コシ)が強い反面保水性が良くありません。
しかし耐久性に優れ、穂先のまとまりがよいので細い筆にしてもしっかりと描けることから繊細な描写に適しています。
そのためデザインやアクリル画などにもよく使われます。
これはナイロンを天然毛に近いように特殊加工したものと天然の獣毛を混合したものです。
ナイロン毛を加工して、天然毛の持つミクロの凹凸(キューティクル)を再現したことで保水性が高まり、本来の弾力性やまとまりの良さと相まってバランスの良い毛質です。
それに天然の高価な毛を組み合わせることでお互いの良いところを持ち合わせ、値段もぐっと抑えられた筆となっています。
こちらの代表がホルベインのリセーブルです。
次に水彩筆の形状について見ていきましょう。
水彩の筆には、油絵の筆にはないような特殊な形状もあります。
その代表的なものをご紹介します。
▶平筆(フラット)・・・平たく面になった形状。面を塗るのに適していますが横に使ってシャープな線描もできます。
▶フィルバード・・・平筆の穂先の角を丸めた形状。面で塗ることもできるし、ある程度の描き込みもできます。
▶丸筆(ラウンド)・・・いわゆる一般的な円柱型の先がとがった形状。
▶ファン・・・扇形。
▶オーバル(猫の舌型)・・・ふっくらとして隈取筆にも似ていますが、先端がシャープに尖った形状で、広い面から繊細な線まで幅広い表現ができます。
▶羽菅筆・・・ラウンド筆の先端、穂先部分が急激に細くとがった形状。
この他にも水彩画ではいわゆる日本画で使う筆も使います。
その代表的なものがこちらになります。
▶面相筆・・・極細の筆。もともとは人物や仏像の顔(面相)を描くための筆ですが日本画、デザイン、水彩画な幅広く線をひくときなどに使われます。
▶彩色筆・・・着彩用の筆。塗りやぼかしなどに使われます。
▶付立筆・・・日本画で代表的な形状。オールマイティーに使われます。
▶隈取筆・・・どんぐりの実のような穂先が膨らんだ形状。 墨絵のぼかし、水彩画でも幅広く使われる。
筆の種類についてはお分かりいただけたと思いますが、代表的なものだけでもこれだけ種類がありますし、メーカー各社がそれぞれの材質、形状ごとのさらに細かく商品を出していますので混乱するのは仕方のないことですね。
ここでは管理人が、自分の教室で最初に揃えていただく筆をご紹介し、さらに経験を積んだ方にはこれをというお勧めの筆をご紹介していきたいと思います。
まず揃えていただきたい種類は2つです。
ひとつは混合毛の筆、そしてもう一つは日本画用の彩色筆です。
形状は両方ともラウンド(丸筆)。
サイズは大・中・小
とりあえずこの2種×3サイズ=6本を揃えておけば初めは大丈夫です。
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
混合毛の筆は、塗りから描き込みまでオールマイティーに使え、初心者から経験豊富な方までにもとても扱いやすい筆です。
材質・・・リセーブル、形状・・・ラウンド(丸筆)、サイズは大中小と曖昧に描いたのは、描く方がどの程度の大きさの紙を一番よく使うかによって変わってくるためです。
例えば一般的によく使うと思われるF4号、F6号あたりだと2~10号くらいの間で考えてください。
ニューリセーブル(ホルベイン)
そしてもう一つが日本画で使う彩色筆。
材質・・・山羊毛、形状・・・丸筆。
サイズは数字ではなく大中小で表記されています。
この筆の特徴は、毛がとても細くて柔らかく日本画用の筆ですので水分の含みがとても良いことです。
ですので水彩画らしいにじみやぼかしをする際にとても使い買勝手が良い筆となります。
お勧めのメーカーはやはり信頼のナムラですね。
次に半年、一年と経験を積んでさらに幅広い表現を試してみたい方にはこちらがお勧めです。
このラウンドタイプクイル仕様の筆は、筆全体が丸みを帯びていて穂先がとても尖った形状をしています。
水の含みが非常によく、水彩画特有のにじみやぼかしといった表現から、筆先を使った細い線描まで使いこなせばこれ一本で絵が描けてしまうほどの優れものです。
ただこの形状の筆は材質が天然毛、主にリス毛であることが大いのでとにかくお値段が張ります!中程度の太さのものでも5.6000円はします(;^ω^)
ユーチューブなどでプロの画家さんが水彩画を描いている動画をご覧になった方もいらっしゃると思いますが、海外の画家さんも含め多くの方がこのタイプの筆を使われています。
管理人は、個人的には少々コシがなさ過ぎて正直使いづらいと感じました。
なので個人的にはこちらのホルベインのブラックリセーブルSQがいい感じに腰があって使いやすいと思います。
値段もリス毛と比べるとお手頃ですし、中級以上の方は迷ったら一本は持っていた方が良い筆です。
そしてこちらが高級メーカーラファエルのリス毛筆。
サイズの大きいものは一本8000円以上・・・これはなかなか・・(;^ω^)ゞ
後はオーバルと呼ばれる形状の筆です。
こちらは厚みのある平筆で、穂先にいくと急激に尖った形状をしており幅広い塗り方ができます。
しかし逆に言うと描き手の手の動き、筆さばきが上手くないと使いこなせないので上級者向けといえますね。
こちらも材質はリス毛が多くとても高価なものが多いのですが、こちらの筆はナイロン製で安価です。
ですがかなり天然のリス毛に近くなるよう加工されていますので初めてこのタイプの筆を使われる方には全く問題なく使っていただけます。
いかがでしたか?
これで少しは筆についてのイメージがまとまったでしょうか?
今回はご紹介しきれませんでしたが、管理人は意外かもしれませんが書道用の筆などもよく使います。
水の含みもよく毛先が長いので結構表現力に富み重宝していますのでこちらもよかったら試してみてください。
ただ筆は初めにも書きましたように、その人その人でどんな表現を望むか?で全く真逆の選択にもなりますので慣れてきた方は、お勧め以外の筆も積極的に試してご自分の望む表現に適した筆を見つけていただければと思います。