こんにちは。管理人の河内です。
今回は前回に引き続いて《水彩画の選び方》をご紹介していきたいと思います。
前半をまだ読んでいない方はぜひそちらからご覧ください。⇒【水彩紙の選び方】コスパ・レベルごとにお勧めの水彩紙をご紹介します!(後編)
今回は数ある水彩紙の中から代表的なものをいくつか取り上げ解説した上で、レベルごとにどの水彩紙を買えば良いか描いてみたいと思います。
目次
現在日本では国内メーカーだけでなくむしろ本場ヨーロッパ産の多種多様な水彩紙が販売されています。
この中から自分にあった水彩紙を見つけるのは至難の業です。
よっぽど研究熱心な方以外はおそらくたまたま手に取ったとか近くの画材屋さんに見かけた手ごろなスケッチブックを使われているのではないでしょうか。
ここではそんな方のために現在販売されている水彩紙の代表的なものを具体的にご紹介してみたいと思います。
(コットンと木材パルプの混合製)
高級紙と呼ばれる中では安価で入手もしやすくとてもポピュラーな紙です。
パステル画にも使用可能です。
自然なクリームがかった色味ですが、より純白に近いように着色したホワイトワトソンもあります。
強めのサイジングが施されていてにじみやぼかしもできますがあくまでもレギュラー紙というレベルです。
こちらもワトソン同様スタンダードな水彩紙です。
おそらく画材屋さんではどこでも取り扱いがあるほど入手しやすく安価なのでお勧めです。
しかしやはり紙自体それほど強いわけではないので何度も塗り重ねには不向きです。
水のはじきは強いのでにじみやぼかしはしやすいですがエッジが割ときつくでます。
(木材パルプ)
国内製品の水彩紙ではかなり上位の紙になります。
発色はきれいすが、水のはじきが強く、ぼかしや滲ませたいときはあらかじめ水を塗って湿らせて置きます。
表面の強さは折り紙付き。
リフティングもしやすく描き直しにも耐えてくれます。
なんとこの紙は表裏の両面が中目と細目として使えるというレアな紙です。
管理人の運営する教室ではこの紙を使用しています。
(木材パルプ)
フランス製高級水彩紙。はじきが強くにじみがしにくい。表面は丈夫で消しゴムによる毛羽たちも少ない。下の色が溶けにくいので重ね塗りがしやすい。
(コットン)
フランス製の最も有名な最高級紙。
画材専門店に行けば、ほぼどこのお店でも最高級紙として置いてあるので入手し易く、全てにおいて高品質な水彩紙と言えます。しかしコットン紙にありがちな、乾くと少し色が薄くなるというのはアルシュも例外ではありません。
(コットン)
ホルベインが出しているイギリス製の高級水彩紙です。
アルシュに比べて価格が安く入手し易い紙です。
全てにおいてバランスが取れていて愛用者も多い人気の水彩紙。
にじみがしやすく柔らかなグラデーションがきれいにできます。
色がナチュラルと純白のホワイトがあります。
強い発色好む場合はホワイト、自然な風合いを好む方はナチュラルと使い分けましょう。
乾くと色が沈み、若干薄く感じます。
色を重ねる際、下の色が溶け出さないので重ね塗りがしやすい反面、リフティングなど後で色を取ることが出来ません。
⑦以下の水彩紙はこのウォーターフォードを基準に述べています。
(コットン)
その名の通りランプの暖かな色合いから着けられたそうですが、実際はそれほど色味があるわけではなく純白ではない優しいオフホワイトと言った感じです。
特徴としては、コットン100%なのに色の定着が強くないため後から色を取るリフティングが出来ます。
これは描き慣れていない方にとっては「やり直しがきく」という意味ではとても大きな利点だと思います。
かといって簡単に取れすぎるわけでもないので色の重ね塗りもきれいにできます。
お値段的にもアルシュやウォーターフォードなどより低価格なのでひょっとすると良いとこ取りのベストチョイスと言える一品です。
(コットンと木材パルプの混合製)
こちらはコットン高配合とありますので100%コットンというわけではなく他の材料も含まれているようです。表面は強くはじきも強い紙です。中目でも表面の凹凸が荒い。
同じホルベインのウォーターフォードに比べて少し安価なので粗いのが好みであればお買い得です。
(コットン)
描き心地、表面の質感ともにウォーターフォードとよく似ています。
ただ水の吸い込みがアヴァロンの方がゆっくりですので、水の量が多いと垂れやすい反面、しばらくぼかしや色の調整ができます。
リフティングもちゃんととれるわけではありませんが可能。発色もウォーターフォードよりはよい感じで値段は少し上がりますがお勧めです。
(コットン)
イタリアの老舗メーカー、ファブリアーノ社が製造している高級水彩紙。
なんとこの会社1283年からあるそうでかのレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロなんかも使っていたとか。
コットン100%の昔ながらの丁寧な製法で作られたこの紙は独特の紙肌があり弾力性、吸収性、表面強度、発色性すべてに優れています。
特にこのエキストラホワイトは純白に近い強い白さが特徴なので、人によってはきつく感じるかもしれません。ナチュラルな色を好む方は「クラシコファブリアーノ」というオフホワイトのものが良いでしょう。
これも好みの問題ですが、管理人的には少し表面が硬い感じがしました。
まコットン製にしては塗り跡のエッジが割とシャープに出るので、アルシュやウォーターフォードのようにすっと紙に染み込む感じが好きな方には向かないかもしれません。
(コットン)
イギリス製の水彩紙。
その中でも最高級に位置する紙でお値段もアルシュ同様お高い紙になります。
(スケッチブックで買った場合、アルシュより安いですが、枚数が少ないので一枚の単価で見ればこちらの方が少々お高いです(;^ω^))
しかしそれだけ紙肌も強く沢山の水を使っても波打ちしにくく素晴らしい水彩紙です。
原材料が木材パルプ製の”プレステージ”のつかない「ラングトン」もありますのでご注意を。
アメリカ、ストラスモア社の高級水彩紙。
こちらもはやはり表面強度は強くマスキングにも耐え滲み、ぼかしもきれいに出来ます。
ウォーターフォードに比べると、表面の凹凸がかなり滑らかで、硬いので線画を重視したい方にはいいかかも。
ここまでいろいろな面から多種多様にある水彩紙についてご紹介してきましたが、これでも実は有名どころのほんの一部です。
おそらくプロの画家でもすべてを使われた方はいないと思いますが、上に挙げたものはポピュラーかつ手に入りやすいいものということで選んでみました。
ではそんな中で、実際にどれを買えば良いのか?
最終的には《どのような表現をしたいか?》×《描き心地》×《コスト》というような計算で皆さんに選んでいただくよりないのですが、ここでは初心者や独学者の方のためにご紹介しているのでレベルごとに管理人からのお勧めをまとめてみたいと思います。
(以下『目』はすべて中目、あるいは細目と粗目しかないものは細目としてとりあげています。)
①全く初めての方・・・ワトソン、ホワイトワトソン、ランプライト
理由:入手しやすくコスト的にも安価。
たくさん描いて水彩に慣れるために適しています。
木材パルプ製なので発色も良くリフティングがしやすいので、初心者にありがちな色を濃く塗りすぎても後から取ることが出来ます。
ランプライトはコットン製なのでにじみもし易い上に他のコットン紙に比べて結構色がとれます。
管理人的にはコスパ、使用感ともにベストチョイス!
②少し慣れてきた方・・・価格は上がりますがその分紙質はぐんとしっかりとしてきます。
1)ある程度写実的に表現したい。しっかりと描き込みたい方、シャープな表現を求める方⇒木材パルプ製⇒ワーグマン、デネブ
2)水彩らしいにじみやぼかしを使った表現がしたい⇒コットン製⇒ウォーターフォード、アヴァロン
③経験豊富・ベテランの方…高価で展覧会などにもしっかり耐えるコットン製⇒アルシュ、、アヴァロン、ファブリアーノエキストラホワイト、ラングトンプレステージなど
こんな感じで選んでいただければ間違いはないと思います。
あくまでも管理人の経験と独断で(;^_^A
ある程度枚数をこなして慣れてきた方には、少し上位の紙を使ってみたいけれど、いきなり高いスケッチブックを買って自分には合わなかったとなっては悲しいですよね。
そういう方のためにさすがは最大手のホルベインさん、このようなお試しスケッチブックを用意してくれています。
~ホルベイン水彩紙コレクション~
サイズはSM(サムホール)と言ってB5ノートくらいの大きさのスケッチブック。
この中にはホルベインが出しているウォーターフォード(ナチュラル、ホワイト)、ホワイトアイビス、ストラスモア、アヴァロン、クレスタ―の6種類が2枚ずつ綴じられています。
あとはファブリアーノからラトライアル商品として2枚シートでお試し用を出しています。
初めはこうしたものを使って、実際の描き心地や滲み具合など皆さんそれぞれとの相性を見てはいかがでしょうか?
いかがでしたか?
水彩紙についてできるだけ簡潔にまとめたつもりですが、やはり種類が多く複雑な解説になってしまいました(;^_^A
ですので初心者の方は、《結局何を買えばいいの?》の部分だけ参考にされても良いと思います。
はじめにも描きましたが、紙が変われば表現の方向性まで全く変わってしまいます。
特に経験を積んだ方でも、場合によっては「何度やっても上手くいかない」とか「自分の思っている表現が出来ない」と感じている方は、普段使っている紙を変えてみるだけで劇的に上手く表現できるようになるかも知れません。
実は管理人もそうでした。そもそも管理人は油絵が専門ですのでいざ水彩画を練習しはじめた時、テクニックの方にばかり目が行き、紙にはそれほど気を使っていませんでした。
しかし紙を変えただけで今までできなかった表現が簡単にできるようになることもありました。
皆さんも是非水彩紙の深い世界に足を踏み入れご自身にあった紙を探してみてください。