ラファエロの技法と画風の変遷を解説します!

こんにちは。管理人の河内です。

今回はレオナルド・ダ・ヴィンチミケランジェロと並んで『ルネサンスの三大巨匠』の一人、ラファエロの技法に注目して解説してみたいと思います。

ラファエロは三人の中で最も後に生まれた画家で、先の二人はおろか、数々のルネサンス巨匠の技法を会得し、「ルネサンスを集大成した画家」ともいえる画家なのです。その完成度の高さから、彼の後に続く時代、ヨーロッパ美術のお手本となったぐらいです。そんなラファエロの技法はどのように移り変わり完成されたのでしょうか?見ていきましょう。

目次

ラファエロの技法の特徴

ラファエロの画風の特徴は、その優美で繊細、理想的に完成されたバランスの良さにあります。

簡単に言うと、レオナルドやミケランジェロのようなクセの強さがない、きわめてバランスの取れた画風なのです。

それらはもちろんラファエロ自身の非凡な才能の賜物ではあるのですが、それに加えて先達の多くの画家や流派から様々な技法を吸収し、そのたびに進化し統合して完成されたものなのです。

はじめはウルビーノでペルジーノのもとでの修業時代、フィレンツェでのレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロらからの影響、そしてローマに入ってそれらはより洗練され昇華して、ルネサンス芸術の統合と集大成として完成されました。

ラファエロ 画風の変遷

ラファエロ初期の作品は、師匠のペルジーノの作品と間違うほどよく似ており、その強い影響を色濃く残しています。

澄み渡った色彩と人物表現における優美さは、この師匠から受け継いだと言えるでしょう。
また『マリアの結婚』に見られるような均整の取れた厳格な構図も師匠譲りです。

上がペルジーノの作品、下がラファエロの『マリアの結婚』↓

 

ラファエロは1500年ごろにはヴェネツィアへ赴き、そこでヴェネツィア派の作品から光と影の効果や鮮やかな色彩の洗礼を受け、また北方フランドル絵画の影響をうけました。

※ヴェネツィア派の特徴は、フィレンツェではデッサンと均整の取れた構図などを重視したのに対し、色が鮮やかでダイナミックな筆さばきによる表現です。フィレンツェの静的理性的表現に対して動的で感情に訴えるような表現と言えます。また北方ルネサンスの特徴は、とにかくめちゃくちゃ細かいの一言に尽きます。画面の端から端まで虫眼鏡で覗くように細密な描写がびっしりとされていて、その分人物表現が固くボリューム感に欠けますが、その徹底したミクロなこだわりが圧倒的なリアリティを生み、画面全体に何とも言えない雰囲気を醸し出しています。

ヴェネツィア派の代表ティツィアーノの作品。

北方フランドル絵画の代表ヤン・ファン・アイクの作品。

 

北方フランドル絵画の影響を受けていたころのラファエロの作品(↓)。

まだ独特の優美さはなく、画面の隅々まで丁寧に細密描写されていますがどことなく固さを感じます。

 

こうして様々な様式を取り入れることで師匠の影響は少しずつ後退し、フィレンツェに出てからもそれはさらに続きます。

フィレンツェ時代はとりわけレオナルド・ダ・ヴィンチの作品に深く感化された時期です。

『ひわの聖母』などに見られる三角形の安定した構図、『マッダレーナ・ドーニの肖像画』(↓)などから見られるモナリザのポーズ。そして寛ぎながらも神秘的な雰囲気わせているところにそれらが見て取れます。


シンプルだった構図は複雑となり輪郭線は柔らかく自然な表現へと移っていきます。

そしてラファエロがレオナルドから学んだ最も重要なことは、人物の感情をポーズや表情など体全体を通して表現するということです。

それが後のヴァチカン宮殿の壮大な壁画のなかで、あらゆるタイプの人物とその感情を描き分ける能力へと続くことになります。

大画面の中にあらゆる年齢、気質の向上達が変化に富みながら調和のとれた画面に溶け込んでいます。

またミケランジェロからは、その肉体美や人物のダイナミックな動きなどを取り入れています。

こうした他の画家の技術をすべて自分のものとできたのもすごい才能だと言えますね。ちなみにレオナルドはこうしたラファエロに対して好意的でしたが、偏屈者で人付き合いの悪いミケランジェロは「真似ばかりしている」と敬遠していたようです。

1507年に教皇に招聘されてローマに移ったラファエロは、それまでの小作中心の制作から、大邸宅やヴァチカン宮殿を飾る大画面で雄大なスケールの装飾壁画を手掛けるようになります。

ラファエロはこうした大画面に、変化に富んだ人物群を登場させるため入念な準備をしました。

考えぬかれた複雑で調和のとれた構図、そして人物たちのポーズや表情は、ラファエロの多数残された数々のデッサンからそのことが窺えます。




しかし入念な下準備を経ていたにも関わらず、ラファエロの作品に登場する人物たちは、レオナルドのような演劇的な派手さはなく、さりげなくごく自然な印象を与えるところが凄いところであり特徴といえます。

ラファエロの聖母子像

ラファエロで忘れてならないのが聖母子像です。
ラファエロは「聖母子の画家」との異名をとるほどで、生涯に50枚ほどの聖母子像を残しています。

ラファエロの描く聖母子像の特徴は、優雅で優しくしとやかな点にあります。

それは柔らかな人物表現と、聖母のそっと下ろされた瞼によって強調されます。

このそっと下した瞼こそラファエロの聖母最大の特徴と言えますね。

それまでは宗教的理由から、厳格で崇高なイメージであらわされることが多かった聖母子像は、レオナルド・ダ・ヴィンチによってより人間的で自然な表現へと変化し、ラファエロがそれを受け継ぎました。そしてさらに血の通った暖かな母と子のイメージへと昇華させ「優しい母と愛らしい子」へと変わったのです。このラファエロの描いたイメージが、時代を超え今もって人気の理由と言えるのではないでしょうか。

 

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