模写をするなら必見!ゴッホの技法

こんにちは。管理人の河内です。

今回は、人気のゴッホの絵について、模写や鑑賞の手助けとなるようなゴッホ独特の技法についてご紹介します。

一見、感覚的に心のおもむくまま色をキャンバスに叩きつけたように思われがちなゴッホですが、そこにはしっかりとした美術理論がありました。

目次

ゴッホの技法① 鮮やかな色彩

ゴッホの技法上の特徴は、何といっても黄色に代表される鮮やかな色彩ですね。

見る者に強烈なインパクトを与えるその色彩感覚は、パリに出て印象派や浮世絵から学んだことによりますが、特に南仏アルルに出てから開花しました。

それまで過ごしたオランダやベルギーで描かれた作品は、とても暗い色調をしていました。

その理由として考えられることは2つあります。

まずその頃ゴッホがモチーフとしていたのが貧しい農民たちで、彼らの厳しい生活をリアルに表現したいという思いから、ミレーなどバルビゾン派の画家たちを敬愛し、その影響によることが挙げられます。

ミレー作「種を蒔く人」(↓)

二つ目は、実際にそれらが描かれたオランダ、ベルギーなどヨーロッパ北部の地方独特の太陽の少ない天候があると思います。

何よりゴッホは見たまま、感じたままを描くべきだと考えていましたので、暗いところで描けば暗い絵に、明るい日差しのアルルで描けば明るい絵になったと考えられます。

こんな感じ。鮮やかな色彩とは程遠いですね。

その後、大都会パリで憔悴したゴッホは、療養のため南仏のアルルへと旅立ちます。

地中海地方独特の日差し溢れるアルルでは、真っ青な空と焼け付く日の光に見るものすべてを輝かせて見せたことでしょう。

そしてゴッホはかねてから魅了されていた日本の浮世絵の世界を、このアルルに見出したのです。

鮮やかな色彩溢れる場所で、それまでの西洋画にはない(実際は日本にもないのですが)浮世絵の世界を重ね合わせ、ゴッホの色彩は一気に開花します。

しかし意外にもゴッホの使用した色数はそう多くはありません。

ゴッホは色数を制限していたにもかかわらず、より効果的に色彩を見せるために補色を利用し、強い印象を与えることに成功しています。

 

(補色とは?…二つの色が隣り合わせに置かれたとき、お互いを最も強く引き立てあう関係にある色のことで、例えば赤と緑、黄色と紫、青とオレンジ色など)

下の図は中学校の美術の教科書などで見たことがある人も多いのでは?

これは十二色相環といって同系色を順に円に並べたもので、この反対側同士の色が補色です。

これをよくわかるのがこの作品↓

「夜のカフェ」です。

天井とビリヤード台の緑、壁の赤がとても強烈に響きあっています。

ゴッホは手紙で「赤と緑によって人間の恐ろしい情念を表現したかった」

「ほとんど相いれない赤と緑ですべてが不調和で対照的だ」と描いています。

この強烈な色の効果をはっきりと認識し、感情表現に使おうとしていたのがよくわかります。

この効果は続く20世紀に「色彩の魔術師」と言われたアンリ・マチス受け継がれていきます。

 

ゴッホの技法② うごめく筆触

ゴッホを特徴つけるもう一つの技法として忘れてならないのが、激情の赴くままに塗られた厚い絵具と、うごめくようなタッチでしょう。

これはゴッホは同時代の画家、アドルフ・モンティセリの厚く塗られた作品に強く感動し、自分の作品に取り入れたことに始まります。

ゴッホは、色彩同様にこの厚塗りこそが、自分の感情を表現するに最高の技法であると考えたのです。

そうした表現もまたアルルに移ってから円熟味を帯びつつ、晩年の精神の不安定さが増すとともにそのタッチもうごめく様に激しくなっていきます。

精神を病みながらも日に一枚、二枚ととてつもないスピードで描き上げていたゴッホは、晩年には筆を使わずに直に絵具のチューブからキャンバスに塗りつけていたといいます。

実際の作品を見たことがある方も多いと思いますが、ゴッホの絵はまるで木彫の浮彫りのように絵具が盛り上がりっています。

近くで見ると、抽象的過ぎて何が描いてあるかわからないほどですが、色彩がまるマーブル模様のように絡み合い、ダイナミックで見る者の感情を揺さぶります。

ゴッホの技法③ 大胆な構図~浮世絵から

そのほか、ゴッホが強く傾倒した日本の浮世絵から、鮮やかな色彩だけでなく色面による構成や大胆な構図、はっきりとした輪郭線などをどん欲に学んで自身の作品に取り入れることに成功しています。

ゴッホは浮世絵の模写を重ね、試行錯誤をしながらこうした技法を自分のものとしていったのです。

 

ゴッホの技法 まとめ

いかがでしたか?

「情熱の画家」と言われるように、ゴッホは後の表現主義の先駆的な画家であると位置づけられており、とかく激情に駆られて思いのままキャンバスに感情をたたきつけたように思われがちですが、実はいろんな先人の技法を勉強し、計算して描かれていたことがお分かりいただけたと思います。

どんな作品も感情やセンスだけでは作品として成り立たず、その裏で理性的な計算が隠されているということですね。

 

 

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