こんにちは、管理人の河内です。
前回までは、油絵の道具について詳しくご紹介してきましたが、今回は油絵を描く人に日常的に起こる小さなトラブルの解決法をご紹介してみたいと思います。
そのトラブルとは「絵の具のキャップが開かない!」という問題(?)です(;^ω^)。
これって小さなことですが、結構面倒で日常的な問題ですよね。
管理人自身もよくあることですが、絵の具のフタが開かなくなった時、皆さんはどうやって開けていますか?
これぞまさにニッチな問題と言えそうですが、今回は安全で簡単に開ける方法をご紹介します。
目次
ではまずそもそもの問題として、どうして油絵具のフタが開かなくなるのでしょうか?
一番の理由は、絵の具をチューブから搾り出したときにチューブの口にわずかについた絵の具や油が固まったというものです。
これが一番ありがちなケースですね。
パレットに必要な絵の具をブチュっと搾り出した後、毎回口を奇麗にふき取る方も多くないと思います。
多くの場合、その時ちょっと口からはみ出した部分が時間がたつと酸化して固化してしまいます。それが接着剤となってフタとチューブをくっつけてしまうのです。
またまれに「買ったままで使っていないのに、開かなくなった」という場合もあります。
その場合、使わずに長い時間放置していた、あるいはお店で買われるまで長い時間が経っていた、ということが考えられます。
そのためチューブの中で、絵の具の成分である顔料と油が分離してしまい、浮いてきた油がチューブの先からわずかに染み出し、そこで固化したのではないかと思います。
ではこうした絵具は古くなって使えないかというとそうでもありません。
油絵具自体は安定した強い絵の具ですので、5年や10年放置しても問題なく使えます(※注あくまでも管理人の経験上です。めったに使わない色や買って忘れて10年以上放置していた絵具も普通に使っています。)
そうなった絵の具は口を開けた後、キャンバスに塗る前にパレットに少し多めに出してペインティングナイフなどでよく混ぜ合わせてから使われる方が良いでしょう。
顔料とオイルが分離した状態だと色がうまく発色しなかったり、固着力が弱くなったりしている危険性があるからです。
では実際に固まったふたを開ける方法をご紹介していきます。
特に女性やご高齢の方は、指先の力や握力が弱くなって力が入らないということがあります。その場合一番手っ取り早いのが、掃除用などの『ゴム手袋をして開けてみる』です。
絵の具のキャップは小さいうえに、指先が滑って力が入らないということもありますのでまず滑らないように厚めのゴム手袋をはめて回してみると意外と簡単に開くことがありますのでお勧めです。
次に安全な方法としてペンチを使う方法です。
これは普通のペンチより先が細いラジオペンチの方が掴みやすく力も入りやすいのでお勧めです。
さらにこういう形状(↓)のペンチがあります。これは先の形状が湾曲しているうえに、ネジを回せば開きの大きさを変えることが出来る優れもの。
実はこれは管理人が生徒さんから教えていただいたものなのですが、挟む幅が変えられるのでチューブの大きさに合わせてフィットさせることが出来るのでとても便利です。
どちらも100均スーパーで買うことが出来ますので探してみてください。
上記二つを試しても開かない場合の最終手段が『お湯で温める』です。
固まった絵具を熱で柔らかくするということですね。
あまりにもフタが硬く閉まってしまっている場合、ベンチではフタが開く前にチューブ自体がぐにゃりと曲がってしまい、下手をするとチューブのお尻や肩の部分が裂けてしまいそこから絵具がはみ出るなど悲惨なことに…。
そうなってはフタが開いてもチューブを押すたびに色んな個所から絵具がはみ出てえらいことになりますのであまり無理をせず、この方法を試してみてください。
やり方は簡単、給湯器から直接熱いお湯をキャップにかけます。
給湯器の温度を最大限(60度くらい?)まで上げてやれば、早ければ30秒ほどで柔らかくなります。
でもこの方法はどうしてもヤケドの危険性がありますね。
結構熱いお湯をかけるので跳ね返りだけでもヤケドする場合があり危険ですのでゴム手袋などをはめ、菜箸のように長いもので挟んでお湯をかけるようにすると良いと思います。
また給湯器からそれほど熱いお湯が出ない場合、そしてより安全に開けるための管理人のお勧めは、鍋にいったんお湯を沸かし、そこにチューブを入れる方法です。
チューブを完全にお湯に入れてしまっては熱による悪影響もないとは言えません。
ですのでお湯は絵具のキャップが浸かる程度1~1.5㎝で十分です。
少ないお湯ですからすぐに沸きますし、とりあえず30秒ほど浸けて一旦上げてみます。
この時も熱いので手袋などをしてください。
キャップを軽く回してみてまだ固いようならもう一度。
よほど絵具がべっとり多量についてこべりついたというのでない限り、1分ほどで柔らかくなります。
キャップが開くことを確認したら、すぐに冷水で冷ましましょう。
そして柔らかいうちにキャップの内側やチューブの先の絵具のかすなどを拭き取っておきます。
では最後にやってはいけない方法もご紹介しておきます。
それは『ライターであぶる』というものです。
実はこれ結構やりがちです。
実際管理人が学生時代から講師になってもちょくちょくやっている人を見かけます。
直にライターの炎をフタに当ててあぶるわけですが、これは温めて柔らかくしようとする発想は間違っていないのですが、絵具が温まる前にプラスチックのフタが溶けてただれたようになるだけなのです。
また実際の火を使うわけですからとても危険です!
ライターで少しあぶった程度で絵の具そのものが燃えることはありませんが、何せ油絵を描いている以上周りにはいろんなオイルが置いてあるはずです。
特にテレピンやペトロ―ルなどは揮発性ですので引火の危険性が大です。
また筆を拭いた布や紙くずが足元に落ちていることもあるでしょう。
もしそれに引火しては大変ですよね。
ですので油絵を制作する場所は絶対!火気厳禁でお願いします。
では最後に、そもそもフタが開かなくならないようにする方法はないのでしょうか?
残念ながらその答えはなさそうです。
初めにも書きましたが、油絵具の油(オイル)というのは固まることで絵具をキャンバスに定着させる“接着剤”なのです。
ですから固まるというのがオイルの役割である以上これはいかんともしがたい問題です。
唯一の解決策は、“空気に触れさせない”ということになりますが、それは実際問題として絵を描く上で不可能ですよね。
何度もキャップを開け閉めするうえに、少しずつ漏れ出してくることはどなたでも経験済みだと思います。
使うたびにしっかりと口にもキャップにも付着した絵具を拭き取ることが出来ればよいのですがのが、それができる几帳面な方はなかなかいませんよね(^^;。
もちろん管理人もできません。
ですので管理人自身がやっている方法としてご紹介できるのは、絵具が固まることを前提として『キャップをちゃんと閉めない』という方法です。
どういうことかというと、まだ買ったばかりの絵具で新しいうちはしっかりと使うたびに閉めます。
しかし何度も使っているうちに絵具がフタに残ったり口の溝に付着したりしてくるとその都度閉める力をゆるめ、かなり使い古してくるとキャップを締めるというより帽子のように“乗っけておく”程度にしておくことです。
つまり汚れの度合いによって、しっかり締めようとせず、ゆるく締めたり最後は軽く1~2回締める程度にしておくようにしています。
こうすることでさらに微妙に漏れ出す危険はありますがそこは固まって動かなくなるよりはマシ…ということで良しとしましょう(^^;
いかがでしたか?
油絵を描く上でだれもが経験する絵具のキャップが開かない問題についてその対策をご紹介してきました。
まずは“ゴム手袋”“ペンチ”そして“お湯”という感じで試していただければと思います。
これも管理人の教室でしょっちゅう『せんせい~フタが開きません~』と言われる日常の授業から出てくる問題でした。是非ご参考にしてみてください。