こんにちは。管理人の河内です。
今回は現在東京・上野の東京都美術館で開催中の『プーシキン美術館展―旅するフランス風景画展』を見て来ましたのでそのレポートをしてみたいと思います。
目次
プーシキン美術館、正式名称は国立A.S.プーシキン造形美術館と言います。
ロシアの首都モスクワにある美術館で、同じくロシアにあるエルミタージュ美術館に次ぐ世界第2位の収蔵品数を誇る大美術館です。
1917年ロシア革命後、モスクワ美術館という名称を経て37年にロシアの国民的詩人アレクサンドル・プーシキンの没後100周年を記念してA.S.プーシキン国立造形美術館となりました。
13世紀から現代まで幅広い西欧絵画を所蔵しており、特に印象派やポスト印象派のコレクションが充実しています。もともとエルミタージュ美術館や国立西欧美術館から所蔵品を移転し、それらがプーシキンコレクションの中核となっています。
Masterpieces of French Landscape Paintings from The Pushkin State Museum of Fine Arts, Moscow
会場:東京都美術館 企画展示室
会期:2018年4月14日(土)~7月8日(日) 9:30~17:30 月曜休館
今展覧会では17世紀から20世紀までのプーシキン美術館が誇る珠玉の風景画65点が出品され、その内50点が日本初公開だそうです。
風景画はヨーッロッパでは主題としては格が低く神話や古代の物語の舞台として、理想化された世界として表現されていました。しかし17世紀のオランダで現実の景色を描く「風景画」が独立して生まれ、その後フランスでコローなどバルビゾン派、印象派へとその系譜が引き継がれていきます。
今展ではそうした美術史の流れを追うように作品の展示が構成されています。
展覧会は6つの章立てがされていて、一、二章を【第一部 風景画の展開】三~六章を【第二部 印象派以降の風景画】という構成です。
〈第一章 近代風景画の源流〉と題して17世紀オランダに始まる風景画を展示。
〈第二章 自然への賛美〉クロード・ロランからバルビゾン派までの作品を展示。
〈第三章大都市パリの風景画〉ルノワール、マルケなど19世紀後半、産業革命を経て激しく変化するパリの街とそこに暮らす人々に焦点を当てた作品。
〈第四章 パリ近郊-身近な自然への眼差し〉モネ、シスレーからピカソ、ブラマンクなど
〈第五章 南へ―新たな光と風景画〉アルマン・ギヨマン、セザンヌ、アンドレ・ドランなど
〈第六章 海を渡って―想像の世界〉でゴーギャン、ドニ、アンリ・ルソー(↓)など。
平日の昼間だったにも関わらず、結構沢山の方が見に来られていました。並んだり待つことはありませんでした。
主にフランス美術史における風景画の流れを概観しようというのが今回の大きなテーマだったと思います。それを考えればその通りの展覧会なのですが、管理人の私個人としては正直期待外れでした。
一応、印象派以降のモネ、ルノワール、セザンヌ、マチス、ピカソとビッグネームを揃えていますが全体としては見応えに欠ける展覧会だと感じました(あくまで私見です)。
どちらかというと前半のクロード・ロランなど古典的な作品はわりと良かったと思います。
今展の目玉として扱われているモネの『草上の昼食』などはその背景などが詳しく書かれていて、若き日のモネが随分苦しんだ作品であることなどを知ると、それはそれで興味深いのですが作品としてはあまりぱっとしません。
例えば単に《モネ展》としてこの作品が、モネの初期の印象派が生まれる前夜を語る作品としての展示であれば、意味合いが変わって楽しめたと思いますが…。
またこの作品自体オルセー美術館にある同名の作品の下絵とみられており《プーシキン美術館》を代表してというのはいかがなものでしょうか。
そんな中でもモネの『白い水連』、セザンヌの『サント・ヴィクトワール山の平野、ヴァルクロからの眺め』『庭園の木々』は見応えがありました。
セザンヌが好きな管理人はちょっと贔屓目で見てしまっているかもしれませんが、最晩年のこの作品には鬼気迫るものを感じました。
その他近代化されて変わりゆくパリの街に焦点を当てた作品など、どれも見やすいといえば見やすいのですが、質という面ではどうでしょうか。情景描写、当時の雰囲気を伝えてくれる資料と見れば絵の世界に入り込み、ある意味“旅行気分”として楽しめると思いますが、作品の質としては…(*_*)
大コレクションを誇るプーシキンならもっといい作品出してよ~というのが偽らざる私の感想です。
なおこの展覧会は、東京展終了後、7月からは大阪に巡回予定です。
会期:2018年7月21日(土)~10月14日(日)
会場:国立国際美術館(大阪・中之島)